社会で孤独を抱える人や孤立する人を支援する対策推進法が31日、成立した。対策の指針となる国の重点計画を法定化することなどが柱。政府は今後本腰を入れ、自治体と連携して施策を展開。政府が掲げる「悩む人を誰ひとり取り残さない社会」の実現を目指す。
 孤独・孤立問題は、独り暮らし世帯の増加や新型コロナウイルスの流行に伴い、他者との交流や支援の機会が減ったことで顕在化。自殺者増加の要因とも考えられ、新法では「人生のあらゆる段階において何人にも生じ得る」とした。
 政府が2022年に、全国の16歳以上の男女2万人を対象に行った調査(回答率56.1%)によると、頻度にかかわらず孤独感が「ある」と答えた人は全体の40.3%。前年から3.9ポイント伸び、「決してない」の割合は5ポイント超縮小した。
 孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた人を見ると20~30歳代に多く、全体の約6割が「5年以上」孤独感が継続していると回答。早期のサポートや声を上げやすい環境整備の必要性がうかがえる。
 政府が孤独・孤立担当相を置き対策に着手したのは、コロナ禍の影響が深刻化した21年。内閣官房に対策室を設け、悩みを24時間受け付ける相談ダイヤル「#9999」の試行やチャットボット(自動応答システム)を導入した専用ウェブサイトを開設するなどしてきた。
 ただ、よりどころとなる法律がなかったこともあり、「本格的な事業ができず、推進に限界があった」(小倉将信担当相)。法成立を機に政府は業務の所管を内閣府に移し、相談ダイヤルの人員体制を拡充して継続的な設置を検討するなど、対策を急ぐ。 (C)時事通信社