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顕在化しない受刑者高齢化の問題点
~貧困、孤立、認知症で遠のく社会復帰~

 今、日本で受刑者の高齢化が問題になっていることをご存知でしょうか。

 高齢者は、悪徳商法や振り込め詐欺などの犯罪の被害者になってしまうケースがしばしばです。一方で、過失運転などで加害者になるケースも頻繁に報道されています。

 日本社会全体に占める高齢者の割合が増えているのですから、受刑者が高齢化するのは当然でしょう。ですが、検挙者や受刑者の高齢化のペースは、社会全体の高齢化の速度を上回っているといいます。

(注)HDS-Rは認知症患者のスクリーニングに使われる簡易的な知能検査【野村俊明教授提供】

 英国では、60歳以上の受刑者は5~6%に過ぎません。日本の受刑者は、60歳以上がおよそ15%です。日本は、受刑者に占める高齢者の割合が、先進国の中で飛び抜けて高いのだそうです。

 刑務所には今、どういう課題があるのか。受刑者の高齢化という、新たな社会問題に詳しい日本医科大学の野村俊明教授にお聞きしました。


 ◇見過ごされる認知機能低下

 野村教授は、北関東のある社会復帰センターで、収容中の65歳以上の高齢受刑者を対象に、簡易な認知機能検査を行いました。その結果、得点が対照群とした一般市民に比べて総じて低く、認知機能障害の存在が疑われる受刑者が少なからずいました。

 高齢受刑者には糖尿病や高血圧の患者も多く、こうした疾患が認知症のリスクを高めることも考えられるといいます。

 刑務所内では、生活が単調なため、認知機能が低下しても、顕在化はしにくい。機能低下が見過ごされたまま出所すれば、その後の社会復帰の適応が難しくなり、再犯の可能性が高くなることも予想される。

 このため、高齢受刑者に対しては、刑務所内で認知機能を適切に評価し、必要なケアや社会復帰へのサポートを行う必要があるということです。

 ◇背景に高齢者の貧困

 野村教授によれば、高齢になって初めて反社会的行為をした人を調べると、大半はそれなりに社会に適応してきた人たちです。

 いわゆる万引きなどの犯罪が多く、背景には高齢者の貧困があり、加えて、身元の引受先がなく、社会的に孤立した人が多い。

 また、認知能力がないまま受刑して、その後、社会に出ても、よりどころとなるつながりは乏しい。

 生活する能力も低下していて、社会生活を継続することが難しい。

 そうしたことから、再び反社会的行為を行うしかない状況に追い込まれる可能性が高いことが想起されるといいます。

左は全犯罪者の犯罪ごとの割合を示したグラフ。右はMMSEという簡易な認知機能検査の数値が23点以下の犯罪者について犯罪ごとの割合を示した。MMSEは30点満点で、23点以下だと認知症の疑いがある【野村俊明教授提供】



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