屋外で長時間プレーするゴルフを習慣的に行うと、皮膚がんリスクは高まるのか。そんな疑問に答える横断研究結果がBMJ Open Sport Exerc Med2023; 9: e001597)に発表された。オーストラリア・University of South AustraliaのBrad Stenner氏らは「ゴルフを月1回以上行う人の皮膚がんの生涯罹患率は一般集団の約2.4倍であり、紫外線(UVR)への長時間の曝露について、予防策を講じる必要がある」と注意を促した(関連記事「ゴルフは高齢者の健康維持に最適」)。

一般集団の皮膚がん生涯罹患率と比較

 ゴルフは心血管の健康や肺、筋力の機能向上など身体面だけでなく、認知機能の維持やQOLの向上など精神面にもさまざまなメリットがあるとされる。また、他のスポーツと比べて比較的けがが少なく高齢者もプレーできるという利点もある。そうした半面、長時間にわたってUVRに曝露されるため、皮膚がんの罹患リスク上昇の可能性が指摘されているものの、報告は限られている。

 Stenner氏らは今回、オーストラリアで習慣的にゴルフをする人を対象に年齢別の皮膚がん生涯罹患率を推定し、一般集団と比較する横断研究を実施。同国のゴルフプレーヤー約45万人が登録する業界団体Golf Australiaを介し、2018年11月~19年5月にオンライン調査「Australian Golf Health Survey(AGHS)」への参加を呼びかけた。参加基準は習慣的に(月1回以上)ゴルフをしていることとしたが、プレー歴、年齢、性、ゴルフの上達レベル、健康問題、人種・民族、地理的条件、社会経済的地位に制限は設けなかった。最終的に336人が解析対象となった。

 また、対照群としてオーストラリア統計局が4年ごとに実施する大規模健康調査「Australian Health Survey(AHS)」の2017~18年調査に参加した一般集団1万5,780人のデータを収集した。皮膚がんの病歴はAGHS、AHSそれぞれ「医師から皮膚がんがあると言われたことがあるか?」という質問に対する回答(はい/いいえ)で評価した。解析は年齢、性、教育歴、喫煙の有無などの交絡因子を調整し、修正ポワソン回帰モデルを用いて行った。

プレーヤー群の4人に1人が皮膚がん診断歴を報告

 検討の結果、対照群と比べてプレーヤー群では平均年齢(62.1歳 vs. 50.6歳)、男性の割合(68.2% vs. 46.3%)、大卒の割合(49.4% vs. 28.6%)が高かった。また、対照群と比べてプレーヤー群で中程度~高度の身体活動の時間が長く(670分/週 vs. 285分/週)、平均BMIが低かった(26.6 vs. 28.3)。

 年齢別の皮膚がんの生涯有病率は、対照群で7.1%(1,173人)、プレーヤー群で27.1%(91人)だった。交絡因子を調整した結果、対照群と比べてプレーヤー群の皮膚がんの生涯罹患リスクは2倍以上だった〔相対リスク(RR)2.42、95%CI 2.01~2.91、P<0.001〕。

紫外線対策の重要性を啓発すべき

 Stenner氏らは、「今回の研究は横断研究であり、皮膚がんと診断された時期の特定ができないため、ゴルフ習慣と皮膚がんの因果関係は推測できない。また、人種・民族の特性や皮膚の色を変数に含めていないため、これらの影響についても考慮できていない。さらに皮膚がんの既往歴の把握は参加者の自己申告に基づくため、過小評価されている可能性がある」と研究の限界について指摘。

 その上で、同氏は「習慣的にゴルフをする人の皮膚がん生涯罹患リスクが一般集団の2倍以上だったことは、過度なUVR曝露から身を守るために日焼け予防対策をしっかりと講じることの重要性を示唆するものである」と結論し、「ゴルフ業界はプレーヤーに対し、適切な紫外線対策を取るように啓発活動を強化していく必要がある」と付言している。

(小谷明美)