超高齢社会を迎え、医療提供体制の効率化や見直しが求められており、在宅医療への期待が高まっている。また、高齢者の増加に伴い心不全の患者数が大幅に増加しており、循環器疾患への対応が課題となっている。GEヘルスケア・ジャパンは9月28日に東京都で開いた記者発表会で、在宅医療や循環器診療での活用が期待されるポケットサイズの超音波診断装置(ポケットエコー)Vscan Air SLの販売を開始すると発表した(関連記事「ここまで使える!在宅でのポケットエコー」)。

パルスドプラとMモードを新搭載

 2010年に販売を開始したポケットエコーVscanシリーズは、持ち運びが可能で低侵襲かつ迅速に診断をサポートすることができるため、在宅医療、救急医療、災害医療などで導入が広がっている。2014年モデルのVscan Dual Probeでは、セクタ型とリニア型を一体化させたデュアルプローブを実現。2017年モデルのVscan Extendではタッチスクリーン方式を採用し、多彩な自動計測アプリケーションを搭載した。2021年モデルのVscan Air CLではワイヤレス化や画質の向上、スマートフォンとの連携を実現するなど利便性が向上している。

 今回発売するVscan Air SLは、従来品で好評だったワイヤレスプローブを採用し、パルスドプラとMモードを新たに搭載した(写真)。血流速度や特定部位の壁運動を可視化することで、心不全患者の心筋収縮能や拡張能などについて正確で多角的な評価が可能になるという。

写真. パルスドプラ(左)とMモード(右)による画像表示

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(GEヘルスケア・ジャパン提供)

 また、同社製の据え置き型エコー上位機種で使用しているXDclear技術を初搭載し、画質がさらにに鮮明に。MIL-STD-810G(米国国防総省の制定規格)に準拠した落下試験や防塵・防水規格(IP67)をクリアするなど、堅牢性にもこだわったという。希望小売価格は税込121万円。

僻地医療・地域医療における高齢者診療の支えに

 記者会見では、実際にVscanシリーズを使用している鳥伝白川会理事長でドクターゴン診療所(沖縄県)院長の泰川恵吾氏も登壇。同氏が診療を行っている宮古諸島では、約220人の患者のうち200人以上が65歳以上であり、6つの島のうち1つは宮古本島との間に橋がなくヘリポートもないため、自ら水上バイクを運転し訪問診療を行っているという。

 同氏は「正確な診断には、その裏付けとなる画像所見がなければ難しい。小型で高性能のポケットエコーは、高齢患者の多い僻地医療・地域治療の支えであり、非常に有用なツールだ」と感想を述べた。

 同社代表取締役社長兼CEOの若林正基氏は「Vscan Air SLは『聴診器のように手軽に持ち運べる』という特徴を進化させた。超高齢社会において求められている在宅医療・プライマリケア領域での普及をさらに進めていきたい」と展望した。

(植松玲奈)