特集

「医療だけでは、もう古い」
病院が街づくりに貢献
~熊本総合病院の軌跡と奇跡〔6〕~

 JR熊本駅から新幹線で1駅の新八代駅からタクシーを10分余り走らせると、ひときわ背の高い重厚な建物が見えてくる。「あの大きい建物が、熊本総合病院ですよ」と運転手は、どこか誇らしげだ。2006年に島田信也氏が新病院長として初めてこの病院に向かったときにタクシー運転手から言われた言葉は、「この病院はもうすぐつぶれるから、行かないほうがいい」というものだった。

病院新築後、アーケード街にも活気が戻る

 ◇スーパーも再開

 島田病院長をはじめ病院職員が一丸となって、「自分がかかりたい病院づくり」に取り組んだ結果、熊本総合病院は見事に復活した。つぶれる病院ナンバーワンと言われていた熊本総合病院が生まれ変わったことで、地域に活気が戻った。「閉鎖されていたスーパー2店舗が再開し、新しいマンションが5件もできました。閉店が目立っていたアーケード街にも少しずつにぎわいが戻ってきました」

 病院の駐車場は患者優先だが、週末や祝日は地域住民に無料で開放している。初詣や夏の花火大会などが開かれる際には、市の中心地にある病院の駐車場は市民にとってありがたい存在だ。

 ◇熊本地震にビクともせず

 2016年4月14日、最大震度7を記録した熊本地震が発生。島田氏は、すぐに病院を避難所として開放した。津波が来るかもしれないという情報もあり、「ここなら安心」と地域住民が続々と集まってきた。「地下50メートルまでくいを100本打って耐震にしていますから、机の上の花瓶がちょっとずれたくらいで、ほとんど被害はありませんでした。もし新築していなければ多数の犠牲者が出たと思います」

2016年の熊本地震では病院を避難所として開放

 同じ市内の八代市立病院は、地震の被害が大きく、19年3月末に廃院されることが決まった。その入院病棟66病床中56床と外来診療を熊本総合病院が引き継ぐことになっている。

 ◇最新型ダヴィンチを導入

 病院の建物にこだわるだけでなく、医療機器も最新機種を惜しみなく導入した。その中でも目玉となるのは、18年8月に導入した手術支援ロボット「ダヴィンチXi」だ。「ダヴィンチは県内では熊本大学と済生会熊本にしかなくて、うちのが最新です。操作性が全然違うんですよ。メンテナンス費用も高額で採算はとれませんが、熊本県南のロボット手術発展のために一肌脱ぐ決断をしました」

 崩壊寸前だった医療水準も飛躍的に向上した。高度急性期総合病院としてヘリポートも活用した救急、災害医療にも対応する。17年に開設した「中耳・内耳手術センター」は、九州では唯一の存在だ。ここで取り組む「経外耳道的内視鏡下耳科手術法」(TEES)は、外から傷が見えず、患者にとって負担の少ない画期的な手術法だ。

 「病床稼働率は99%を超えています。手術件数、救急車搬入台数、救急患者数もすべて右肩上がり。紹介率は約85%、逆紹介率は約75%です」

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