日本医師会(日医)は今年(2023年)8月、医療用医薬品不足の現状と問題点について日本医師会会員および地域医師会会員を対象に緊急調査を実施した。常任理事の宮川政昭氏は神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授の坂巻弘之氏らとともに本日(10月6日)、緊急会見でその調査結果を報告。今般の医薬品不足を受け、不足している医薬品、取り扱っている卸、薬局などについての回答を基に国の検討会や対象業界団体に対し改善要望を働きかける考えだ。

需要増に対し、生産体制は?

 今回の調査に対し、9月30日までに6,773の医療機関が回答した。処方箋は16.5%が院内処方、55.9%が院外処方、27.6%が両方で対応していると答えた。また、全国的に90%前後の医療機関が入手困難な医薬品があると答えており、地域に在庫の偏在はないことが分かった。

 医薬品の納入状況については、院内処方において49.7%が「発注しても納品されない」と答えていた。入手困難な薬剤として回答のあった2,082品目(院内処方)、1,486品目(院外処方)のうち、製薬企業は院内処方は670品目(32.2%)、院外処方は574品目(38.6%)は「通常出荷」と認識していた〔日本製薬団体連合会(日薬連)の「医薬品供給にかかる調査」〕。

 この両者による認識の違いの原因について宮川氏は、日薬連の調査ではどの時点から通常出荷としているか定義が曖昧であると指摘。「感染症の流行により需要が重なっているにもかかわらず、余剰生産されていない状態を通常出荷としている可能性が考えられる。新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV-2)陽性例が発生して久しいため、しっかりとした対策を求めたい」と述べた。

上気道症状に対する薬剤が「不足」

 医療機関が不足していると認識する内服薬は主に去痰薬や解熱鎮痛薬といった上気道症状に対応するもので、急性期だけではなく慢性呼吸器疾患の患者にも使われる。不足を解消するには、一度に多量の薬剤を処方する長期処方を控えることが必要で、それにより急性期の患者に潤沢に行き渡るよう、厚生労働省に医療機関への通達を依頼したという。

 宮川氏は「供給不足は後発医薬品だけの問題ではない」とし、トレーサビリティの問題に触れ、「医薬品の製造能力の低さやサプライチェーンの脆弱性は日本の医薬品全体に関わる問題。日本の医薬品メーカーが総力を挙げて一丸となって取り組んでいただきたい」と締めくくった。

栗原裕美