化膿性汗腺炎(hidradenitis suppurativa;HS)は日本では知名度が低く、汗腺の感染症と誤解されがちだが、自然免疫の活性化を背景に生じる慢性・炎症性・再発性・消耗性の皮膚毛包性疾患で、疼痛や日常生活の障害により患者のQOLは著しく低下する。痛みの強さが重症度と一致しないケースが多く、寛解後も疼痛が持続することも明らかにされており、HS患者では線維筋痛症の有病率が高いとの報告もある。オランダ・Erasmus University Medical Center RotterdamのPim Aarts氏らは、HS患者を対象に線維筋痛症有病率を検討したところ、対照群に比べ高かったとの結果をJAMA Dermatol2023年10月4日オンライン版)に報告した。

重症度スコアと疼痛スコアが線維筋痛症に関連

 Aarts氏らは、2020年2〜11月にErasmus University Medical Center Rotterdamを外来受診した患者から、18歳以上のHS群100例(年齢中央値34.5歳、女性71例)と年齢・性をマッチングさせた疼痛関連疾患を有さない対照群100例(同33.5歳、71例)を抽出し、線維筋痛症診断基準2016年版に従い診断。多変量ロジスティック回帰モデルで線維筋痛症の関連因子を評価した。

 その結果、自己申告に基づく線維筋痛症の有病者に両群で有意差は認められなかったが、診断基準にのっとり診断したところ、対照群と比べHS群で有病者が有意に多かった(4例 vs. 13例、P=0.02)。

 単変量解析で線維筋痛症との有意な関連が示された因子は、HS〔オッズ比(OR)3.56、95%CI 1.13〜11.41、P=0.03〕、関節リウマチ(同5.97、1.01〜35.29、P<0.05)、うつ病の既往(同7.75、2.68〜22.39、P<0.001)だった。多変量解析の結果、HS患者における線維筋痛症の有意な危険因子はHS(同3.45、1.08〜11.09、P=0.04)のみが抽出された。HS群に着目したところ、国際HS重症度スコア(同1.11、1.03〜1.20、P=0.01)および疼痛スコア(同1.47、1.15〜1.87、P=0.002)が線維筋痛症との関連を示した。

 Aarts氏らは「線維筋痛症診断基準2016年版に基づく診断の結果、HS群は対照群と比べ線維筋痛症の有病率が高かった」と結論。「HSおよび線維筋痛症で観察される炎症性サイトカイン値の上昇が線維筋痛症有病率の上昇と関連している可能性を示唆しており、ガバペンチンやプレガバリンなどの抗うつ薬および抗てんかん薬は、HSと線維筋痛症を併存する患者の慢性疼痛治療に有益な可能性がある」と考察している。

編集部