第三者提供の精子を用いた不妊治療を行う「はらメディカルクリニック」(東京都渋谷区)は23日までに、女性が夫の死後に体外受精による受精卵の移植を受け妊娠した事例が今春に起きたと公表した。女性は夫の死亡を隠しており、「夫婦のどちらかが死亡した場合、治療は終了となる」としたクリニックの指針に違反するという。
 提供精子による体外受精を巡っては、国による法整備が進んでいない。同クリニックは自ら定める指針に基づき法律婚の夫婦に行っているが、日本産科婦人科学会は実施を認めていない。
 2020年成立の民法特例法では、精子提供を受けて妻が出産することに同意した夫を「父」と定めた。今回の事例では夫が亡くなっており、提供者が親子関係を求められる恐れがあるという。
 同クリニックはホームページで「医療技術を不正に利用されたのは遺憾という言葉で表現できない」と表明。同学会に報告するとともに、提供精子による体外受精の新規実施を停止した。 (C)時事通信社