ヒトなどの細胞内にある酵素「ERp18」が老化を抑制する機能を持っていることを、京都産業大の研究グループが解明した。細胞内にある亜鉛イオンと結合して、老化を進める活性酸素の一つ、過酸化水素を分解する。細胞の老化や酸化ストレスを原因とする病気の予防や治療法開発につながる可能性があるという。論文は8日付の米科学誌「セル・リポーツ」電子版に掲載された。
 ERp18は細胞内にある小器官「小胞体」に含まれる。炎症やアレルギーを抑制する酵素「チオレドキシン」とよく似た構造だが、詳しい役割は分かっていなかった。
 研究グループはERp18を持つさまざまな生物のアミノ酸配列を調べた結果、亜鉛イオンと結合するとERp18が3個つながり、活性酸素の一つ、過酸化水素を水と酸素に分解することを確認した。
 さらに、ヒトの細胞でERp18を作る遺伝子の働きを抑えると、過酸化水素が蓄積することが判明。また、線虫でも同様に過酸化水素が体内にたまり、遺伝子操作していない通常の線虫と比べて寿命が1割ほど短くなった。
 ただ、細胞内でどのように亜鉛イオンと結び付くのかは解明できていない。研究グループの京都産業大生命科学部の潮田亮准教授は「亜鉛を小胞体に取り込ませ、効率よくERp18に亜鉛を結合させる薬剤を開発できれば、老化が原因の病気の予防や治療法開発につながることが期待される」と話している。 (C)時事通信社