治療・予防

国内にも死亡例あり―広東住血線虫症
生野菜への付着で摂取の恐れも

 2018年の秋、悪ふざけでナメクジを生食したオーストラリアの男性が、長い闘病の末に死亡したと報道された。原因はナメクジに寄生していた「広東住血線虫」。この寄生虫、実は日本でも各地から感染の報告があり、決して対岸の火事ではないようだ。国内外の寄生虫疾患事情に詳しい、おおり医院(神奈川県山北町)の大利昌久院長に聞いた。

中間宿主の体内にいる広東住血線虫の第3期幼虫が人に寄生する

 ▽感染ネズミは全国に

 広東住血線虫は、ネズミの肺動脈(肺へ血液を送る動脈)に寄生する線虫であり、人間の体内で成虫は生きられない。人間への感染ルートについて、大利院長は「ネズミの体内で第1期幼虫となり、ふん便に交じって外界に出てきます。この幼虫は、ナメクジなどの中間宿主が捕食・接触することで、中間宿主の体内に侵入。そこで人に感染し得る第3期幼虫まで成長します。その中間宿主を食べると、人間にも寄生してしまうのです」と説明する。

 広東住血線虫に感染したネズミは、熱帯・亜熱帯の東南アジアや太平洋諸島に生息し、主に船舶の積み荷などとともに広く世界中に運ばれている。日本でも、北海道から沖縄の各地で感染ネズミが確認され、第3期幼虫をナメクジなどの中間宿主から検出した地域も少なくないという。

 「ナメクジは積極的に食べないでしょうが、生野菜に付着したものを無意識に口に入れてしまうことはあり得ます。精力を付けるためカタツムリなどを生食する国もあるようです」と大利院長。中間宿主には食用のカタツムリのほか、ヒキガエル、淡水のエビやタニシの一種などがある。

 ▽中間宿主の生食はNG

 人の体内に侵入した第3期幼虫は、胃腸の壁から血液などに乗って脊髄や脳などに到達し、好酸球性髄膜脳炎や好酸球性髄膜炎と呼ばれる病気を引き起こす。体内に侵入後、約2週間で発熱や激しい頭痛、嘔吐(おうと)、顔面や四肢のまひなどが表れるほか、物が二重に見えるなどの症状が出ることもある。

 多くがメベンダゾールなどの駆虫薬や経口ステロイド薬による治療で軽快するが、昏睡(こんすい)状態に陥り、死に至るケースもある。国立感染症研究所の報告によると、日本での人への感染は50例以上。うち1例は死亡している。

 大利院長は「中間宿主は決して生で食べないことです。生野菜はよく洗ってから食べてください。広東住血線虫の接触感染は確認されていませんが、可能性はゼロではありません。他の寄生虫疾患を防ぐ意味でも、調理器具は常に清潔に保つよう心掛けてください」と注意を喚起している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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