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医師といえば、白衣を着ているイメージが強いと思います。しかし近年は、白衣を着ずにスクラブスーツと呼ばれる作業着のような服を着る医師が増えています。実際、昔の医療ドラマに出てくる医師はたいていワイシャツにネクタイ、その上から白衣を羽織っていましたが、近年は、紺や緑、えんじ色のスクラブスーツを着ている医師がよく登場する印象です。
なぜ、このように変化してきたのでしょうか。実は、白衣は医師が仕事をする上で不便に感じることの多い服だからなのです。
最近は、白衣よりもスクラブスーツを着ている医師が多い
◇院内を動き回る医師も
患者さんから見れば、医師は外来の診察室で座って話を聞いたり診察したりするイメージがあると思いますが、科によっては院内を動き回る時間の方が長い医師も多くいます。
病棟、各種検査室、外来、手術室などを行ったり来たりとせわしなく動き回る医師にとって、裾の長い上着は結構不便に感じることがあるのです。 白衣の裾が病棟に置かれたラックや点滴棒などに引っかかることもあります。
入院中の患者さんのベッドサイドで全身を診察したり、点滴をしたり、さまざまな検査をしたりすることもよくあります。こうした際、姿勢によっては白衣の裾が床についてしまい、不潔になるという欠点もあります。
◇汚れが目立ちやすい
白衣は真っ白ですから、汚れが目立ちやすい、ということもあります。医療行為をしていると、どうしても血液や体液などが白衣に付着してしまうことがあります。真っ白の服だと、こうした汚れがどうしても目立ってしまうのです。
目の前の医師が血液の付着した白衣を着ていたら、患者さんもあまりいい気持ちはしないでしょう。かといって、頻繁に着替えるほど白衣のストックがあるわけでもなく、タイミングを見計らいながらクリーニングに出すことになるのです。
こうした医師の働き方を考慮すると、スクラブスーツは極めて合理的です。学校で着る体操服のように身軽で動きやすく、また色が濃いので汚れもさほど目立ちません。こうした理由から、スクラブスーツを愛用する医師が増えているのだと思います。
では、逆にスクラブスーツの欠点は何でしょうか。
◇清潔感と安心感
実は、特に高齢の患者さんにとっては、フォーマルな格好に白衣を来て診療する医師の方が清潔感があり、信頼できるように見えるのだそうです。昔ながらの医師のイメージ通りの方が、何となく安心感を抱きやすいのです。
確かに、スクラブスーツは見た目上はただの作業着です。昔はあまり見られなかったということもあり、白衣のような安心感は与えにくいのかもしれません。また、スクラブスーツの欠点として、職種間の区別がつきにくい、ということもあるでしょう。
スクラブスーツが広く導入された病院では、医師や看護師、各種の検査技師、理学療法士や作業療法士、薬剤師に至るまで、非常に似た格好をしています。目を凝らして名札を見ないと職種が分からず、患者さんを混乱させてしまうこともあるのです。
そこで、スクラブスーツの色を変えるなど、さまざまな対策をしている病院もあります。医師がスクラブスーツの上から白衣を着て、処置などの時は白衣を脱ぎ、患者さんと接する時は白衣を着る、といったルールにしているところもあります。
合理性を追求することは、安全性の観点から重要とはいえ、患者さんからの印象や利便性を考慮して、うまく落としどころを探らないといけないのです。(外科医・山本健人)
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