フィンランド・Niuvanniemi HospitalのTapio Paljärvi氏らは、双極性障害(bipolar disorder;BD)患者の超過死亡に寄与する因子について、フィンランドの一般住民データの後ろ向き解析により検討。「15~64歳のBD患者と一般住民との間の死亡率ギャップ(mortality gap)に寄与する因子としては、身体的原因(somatic causes)によるものよりも外的原因(external causes)によるものの方が大きい」とBMJ Ment Health(2023; 26: e300700)に報告した。

15~64歳の早期死亡の原因は外的原因か身体疾患か

 抑うつエピソードと躁エピソードが交互に現れるBPの生涯罹患率は、多くの国で約1%と推定されている。BD患者の全死亡率は一般住民の2倍以上と報告されており、外的原因(事故、自殺、暴力、不慮か故意か決定されない事件など)中でも自殺による死亡リスクが一般住民よりも著明に高いことはよく知られている。一方、BD患者では一般住民と比べ、身体的原因による死亡も多く、これが超過死亡(excess mortality)をもたらし、死亡率の差となって表れているとの報告もある。

 潜在的生存年損失(potential years of life lost;PYLL)の観点から社会への影響が大きいのは15~64歳の早期死亡であることから、Paljärvi氏らはこの年齢群におけるBD患者と一般住民との死因特異的な死亡率ギャップを検討した。

外的原因による死亡の大半が超過死亡

 1998~2018年にフィンランドのnational registersに登録されたBDでない一般住民をreferenceとして、BD患者における1,000人・年当たりの標準化死亡比(SMR)を求めた。

 解析対象となったBD患者は4万7,018例で、女性は2万6,717例(57%)。登録時の平均年齢は38±13歳、追跡期間中央値は約8年(四分位範囲4~11年)だった。

 追跡期間中、BD患者のうち3,300例(7%)が死亡。そのうち外的原因による死亡は1,273例(39%)だった〔740例(58%)は自殺〕。一方、身体的原因による死亡は2,027例(61%)、死因はアルコール関連(595例、29%)が最も多く、心血管疾患(CVD:552例、27%)、がん(442例、22%)、呼吸器疾患(78例、4%)、糖尿病(41例、2%)が続いた。

 一般住民と比較したBD群の全死亡率は約3倍(SMR 2.76、95%CI 2.67~2.85)だった。外的原因による死亡率は約6倍(同6.01、 5.68~6.34)、身体的原因による死亡率は約2倍(同2.06、1.97~2.15)だった。

 また、外的原因による死亡例のうち83%(1,273例中1,061例)、身体的原因による死亡例の51%(2,027例中1,043例)が超過死亡であった。15~44歳群においては超過死亡の大半は外的原因によるものだったが、45~64歳群における超過死亡への寄与は、外的原因と身体的原因でほぼ同等だった。

年齢による死亡パターンを考慮した予防戦略が必要

 以上の結果を踏まえPaljärvi氏らは「重症精神疾患における超過死亡の因子に関する議論においては、これまで外的原因よりもCVDをはじめとする身体的原因を重視する報告が多かったが(BMJ Open 2013; 3: e002373PLoS One 2011; 6: e24597World Psychiatry 2017; 16: 163-180)、これらの報告では全年齢群の死亡例の合計に基づいて結論が導かれている」と指摘。

「われわれは15~64歳のBD患者に限定した解析を実施し、身体的原因による死亡の約半分が超過死亡である一方、外的原因による死亡のほとんどが超過死亡であることを明らかにした。BD群と一般住民との死亡率ギャップを縮小するには、年齢群により異なる死亡パターンを考慮した、年齢別予防戦略の構築が求められる」と結論している。

木本 治