統合失調症患者における性の健康に関する問題は、前世紀の末ごろから注目され出したが、臨床現場では十分に把握されていない。フランス・Aix-Marseille UniversityのThéo Korchia氏らは、統合失調症患者における性機能障害の有病率と関連因子を検討するシステマチックレビューとメタ解析を実施。半数超の患者に性機能障害が見られること、抗うつ薬が一部の性機能障害のリスク低下と有意に関連していることなどをJAMA Psychiatry2023年9月13日オンライン版)で報告した。

観察研究72件・2万例超を組み入れ

 Korchia氏らは、Google、Google Scholar、PubMed、MEDLINE、ScienceDirect、Université Sorbonne Paris Citéのデータベースを検索し、昨年(2022年)6月までに発表された統合失調症スペクトラム障害における性機能障害の有病率に関する研究を、言語と時期によらず全て抽出。治療中の患者の日常的な性機能障害に焦点を当てるべく観察研究に絞り込み、対象が入院患者のみの研究やランダム化比較試験は除外してシステマチックレビューとランダム効果モデルによるメタ解析を実施した。主要評価項目は、性機能障害の有病率および個々の障害の発生割合とした。

 合計1,119件の研究のうち、33カ国から報告された72件・2万1,076例を組み入れた。

男性で勃起不全や性欲減退、女性ではオーガズム障害や無月経

 統合失調症患者における性機能障害の合併率は56.4%(95%CI 50.5~62.2%)。男女別では、男性が55.7%(同48.1~63.1%)、女性が60.0%(同48.0~70.8%)だった。

 性機能障害の種類で多かったのは、男性では勃起不全(44%、95%CI 33.5~55.2%)と性欲減退(41%、同30.7~51.4%)、射精障害(39%、同26.8~51.8%)で、女性ではオーガズム障害(28%、同18.4~40.2%)と無月経(25%、同17.3~35.0%)だった。

 不均一性に関連する因子として、研究デザイン、実施時期と地域、社会・人口統計体系データ、アルコール使用障害、精神疾患の診断、疾患重症度、抗うつ薬・抗不安薬の使用―が抽出された。

抗うつ薬、気分安定薬が勃起障害および射精障害のリスク低下と関連

 性機能障害の頻度は、統合失調感情障害の患者と比べ統合失調症患者で高かった。一方、罹患期間の長い患者では、勃起障害の頻度が低かった。

 逆分散法による感度分析を行ったところ、抗うつ薬の処方は、勃起障害(β=-6.30、95%CI -1.78~-10.82、P=0.006)、射精障害(β=-6.10、同-1.53~-10.68、P=0.009)のリスク低下と有意に関連。気分安定薬の処方も同様に、勃起障害(β=-13.21、同-17.59~-8.8、P<0.001)、射精障害(β=-11.57、同16.34~-6.80、P<0.001)のリスク低下と有意に関連していた。

 抗精神病薬による影響に関しては、一貫した結果が得られなかった。

 これらの結果より、Korchia氏らは「40年間における観察研究のメタ解析により、統合失調症患者における性機能障害の有病率は高いこと、関連因子にはかなりの不均一性があることが示された」と結論。「患者の性的な健康を改善する上で、抑うつ症状の治療は有効な戦略になりうる」と指摘している。

(小路浩史)