中国・Third Hospital of Shanxi Medical UniversityのShisheng Peng氏らは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者における吸入ステロイド薬(ICS)使用と骨折リスクとの関連を検討するため、ランダム化比較試験(RCT) 44件のシステマチックレビューおよびメタ解析を実施。その結果、ICSを用いた治療はICSを用いない治療と比べCOPD患者の骨折リスクを上昇させたとBMC Pulm Med2023; 23: 304)に報告した(関連記事:「ステロイド用量依存性に骨折リスク上昇」)。

8万7,594例が対象

 COPDの薬物療法では、ICS、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)などが単独使用または併用される。ICSはCOPD患者においても骨折リスクを上昇させる可能性が報告されているが、詳細は明らかではない。そこでPeng氏らは、COPD患者におけるICS使用と骨折リスクとの関連を検討するため、システマチックレビューおよびメタ解析を実施した。

 2人の独立レビュアーがPubMed、EMBASE、MEDLINE、Cochrane Library、Web of Scienceに収載された文献から、COPD治療におけるICS単独または併用療法に関するRCTを検索。2022年10月に開始、同年11月に更新し、解析対象としてRCT 44件・8万7,594例を組み入れた。

 組み入れはPICOS基準に基づき、①COPD患者、②ICS単独またはLABAおよび/またはLAMA併用を含むあらゆるタイプの吸入グルココルチコイドを含む介入、③プラセボまたはICSを含まない他の薬剤による非ICS治療を対照として使用、 ④結果として骨折イベントを報告またはClinical Trials.govで骨折イベントを報告している試験、⑤RCTのみ−を対象とした。主要評価項目は骨折イベントとした。

 また追跡期間(12カ月以上/未満)、試験参加者の平均年齢(65歳以上/未満)、COPDの重症度(GOLDステージⅡ/Ⅲ)、併用薬の有無(ICS単独/LAMAまたはLABAとの併用)などに基づき、サブグループ解析も行った。

LABA併用、LABA+LAMA併用で特に高リスク

 解析の結果、非ICS治療と比べICSを含む治療〔リスク比(RR) 1.19、95%CI 1.04〜1.37、P=0.010〕、特にICS+LABA併用療法(同1.30、1.10〜1.53、P=0.002)および3剤(ICS+LABA+LAMA)併用療法(同1.49、1.03〜2.17、P=0.04)はCOPD患者における骨折リスクの上昇と有意に関連していた。

 サブグループ解析では、骨折リスクの上昇と有意に関連する因子として治療期間12カ月以上(RR 1.19、95%CI 1.04〜1.38、P=0.01)、ブデソニド療法(同1.64、1.07〜2.51、P=0.02)、フルチカゾン療法(同1.37、1.05〜1.78、P=0.02)、平均年齢65歳以上(同1.27、1.01〜1.61、P=0.04)、GOLDステージⅢ(同1.18、1.00〜1.38、P=0.04)が抽出された。

 さらに、定量噴霧式吸入器(MDI)によるブデソニド療法(320ug 1日2回、RR 1.75、95%CI 1.07〜2.87、P=0.03)も骨折リスクの上昇と有意に関連していた。

 研究の限界についてPeng氏は、試験参加者のベースラインにおける合併症や病歴を考慮していないことや、骨折の種類を分類していないことなどを指摘。一方で、「本研究には大きな臨床的意義がある。長期間のICS療法を要する重症COPDの高齢患者に対しては、メリットとデメリットを考慮してICSの過剰使用を防ぐ必要がある」と述べている。

(今手麻衣)