【エルサレム時事】パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの衝突で、イスラエルの空爆を受けるガザでは、人道状況の一層の悪化が叫ばれている。国連によると、ガザの35の病院のうち12が燃料枯渇による電力不足や爆撃の被害で閉鎖。「アルアウダ病院」のラファト・マジダラウィ支配人(50)は時事通信の取材に「医療はもう虫の息だ」と危機感をあらわにした。
 取材は24日と25日に行った。アルアウダ病院は、ガザ市近郊とガザ中部ヌセイラットの2カ所にある。どちらも空爆による負傷者が次々に運び込まれ、病気などに対する一般の医療サービスを提供することは不可能。応急処置と緊急外科手術、出産に絞ることを決めたという。
 ただ、イスラエルの封鎖で電力は慢性的に不足している。「滅菌や麻酔にも電力が必要だ」とマジダラウィ氏は強調。近隣住民らから発電用の燃料を供出してもらい、さらに太陽光発電も行っているが十分には程遠い。医薬品も治療場所も足りず、病院の廊下で麻酔なしの切断手術を行わざるを得ない状況だと説明した。
 ガザ市近郊の病院では、イスラエルからの退避勧告もあった。しかし、「われわれは中立の立場で医療を続けることを誓った」。医者や看護師、職員は使命感だけで働き続けていると訴えた。
 ガザではきれいな水がほとんど手に入らなくなり、衛生面の悪化も深刻だ。マジダラウィ氏は、感染症が拡大していると指摘。患者の6~7割が女性と子供で、「医療システムにとって重大な問題になっている」と語った。
 ガザへの食料や水、医薬品などの人道支援搬入は21日から始まった。しかし、イスラエルはハマスに横流しされる恐れがあるとして燃料の運び込みは認めていない。 (C)時事通信社