医学トップの視座

日本最小規模で県民の医療を担う
アットホームで学閥がない―横浜市大医学部

 横浜市立大学医学部は、1859年(安政6年)にヘボン式ローマ字の考案者として知られる米国の宣教医、ジェームス.C.ヘボンが横浜で医療活動を開始したのが源流と伝えられる。貿易港として栄えた横浜で、全国に先駆けて西洋医学が発達した。2年次以降の専門教育を行う福浦キャンパスは、街の喧騒(けんそう)から離れ、集中して学ぶのに最適な立地。益田宗孝医学部長は「日本で最も定員数が少ない医学部医学科で、学生も教員も皆顔見知りでとてもアットホーム。落ち着いた環境の中でじっくり学べます」と話す。

インタビューに応える益田宗孝医学部長

 ◇国試合格率は2位

 神奈川県は東京都に次ぐ人口を抱えているが、他に国公立大学医学部がないため、公立大学の横浜市大医学部医学科が県内全域の地域医療を支える責務を担っている。「神奈川県の人口比あたりの医師数は全国39位、内科医は42位、外科医は46位の医師過疎地域です。地域医療が崩壊しないよう、人材育成を進めていかなくてはなりません」と益田医学部長は言葉に力を込める。

 一般枠、地域医療枠のほかに、特に医師が不足している小児科、産婦人科、麻酔科、外科の4科を指定診療科枠として増員してきたが、定員数90人は日本最小規模。今年度から国内外のインターナショナルスクールの卒業生のための国際バカロレア入試も新設した。「自由な環境の中で自主的に学んできた学生に入学してもらい、リーダーシップを発揮してくれれば」と期待している。

 医師国家試験の合格率は昨年度2位。過去5年間は常にベスト10に入っている。「もともとレベルの高い学生が入学してきているというのもありますが、教員も手取り足取り、根気よく指導した結果だと思います」

 ◇カリキュラム再編で実習時間を充実

 2018年に医学教育分野別認証を獲得し、そのためにカリキュラムを再編成した。医学部6年の教育は、30年前は最初の2年間で教養課程、残りの4年間で医学を学ぶシステムだったが、現在は専門教育の内容が大幅に増えた上に、国際化への対応で実習時間を増やすなどの変革が求められている。

 「あまりに膨大な内容を学ばなければならないので、早くから医学の専門課程を始める必要が出てきました。このため専門分野以外の教育に十分な時間が割けなくなってきました。私たちが学生だった時代は、もう少し余裕があったのですが、今の学生は本当に大変です」

実習を受ける医学部生(横浜市立大学提供)

 ◇海外留学に注力

 大学独自の取り組みとして、リサーチマインドを育成するため、在学中に3カ月間の研究と1カ月程度の臨床実習を自由に行える期間を設けている。基礎や臨床の医学研究を体験するリサーチ・クラークシップ、学生が医療チームの一員として実際の診療に参加するクリニカル・クラークシップは、海外の施設で行うこともできる。大学全体で海外留学には力を入れており、数多くの受け入れ施設と大学間協定を結んでいる。

 「学生を受け入れていただけるところを探して、世界の大学ランキングトップ100に入るような大学とも提携しています。今年の医学部医学科の留学者数は24人まで増加しました」

 学生が研究論文を教授会でプレゼンテーションし、その中のトップ3に与える「医学部長賞」には、目を見張るような研究が集まるという。17年度の受賞テーマは「法医学が子どもの死を防ぐためにできること」「虚血による心筋細胞死におけるTCTPの役割」「非肥満モデルにおいて1型アンジオテンシン受容体の過剰活性化がインスリン抵抗性に与える影響の検討とそのメカニズムの解明」の3題。

 「発表を聞いていると、ドクター並のレベルと思うような研究があります」

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