中国・Beijing University of Chinese MedicineのHaiqiang Yao氏らは、GLP-1受容体作動薬のプラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)をシステマチックレビューで抽出し、各薬剤の多面的な効果と安全性をネットワークメタ解析(NMA)で検討。「血糖コントロール効果はチルゼパチド、体重減少効果はCagriSemaが最も高かったが、有害事象として消化器症状の報告も多く注意が必要だ」とBMJ(2024; 384 :e076410)に報告した。

世界58カ国/地域で実施されたRCT 76件を抽出

 2型糖尿病治療薬として登場したGLP-1受容体作動薬は、SGLT2阻害薬と同様、血糖降下作用以外の多面的な効果が報告され、既に肥満症治療薬としても臨床応用されている。GLP-1受容体作動薬を対象とする研究のメタ解析はこれまでにも発表されているが、新規薬剤の開発が相次いでおり、GLP-1受容体作動薬の効果と安全性に関する網羅的な最新エビデンスの構築が求められている。

 Yao氏らは、PubMed、Web of Science、CENTRAL、EMBASEからGLP-1受容体作動薬を対象としたRCTを2023年8月まで検索し、基準を満たしたRCT 76件を抽出。各薬剤の血糖コントロール、体重、脂質プロファイルへの効果と安全性をNMAで解析した。

 試験は世界58カ国/地域で実施され、患者総数は3万9,246例。各試験のサンプル数の範囲は29~1,878例、試験期間は12~78週間で、平均年齢は56.79±9.59歳、男性54.06%、糖尿病罹病期間8.47±6.46年、ベースラインのBMIは31.73±6.55、HbA1cは8.13±0.93%だった。

HbA1c改善のエフェクトサイズはチルゼパチドで最大

 対象となったGLP-1受容体作動薬は、チルゼパチド、セマグルチド、デュラグルチド、リラグルチド、エキセナチド、リキシセナチド、mazdutide、CagriSema* 、orforglipron、retatrutide、PEG-loxenatide、albiglutide、PEGylated exenatide、ITCA 650**、efpeglenatideの15剤。
 *セマグルチドと新規アミリンアナログCagrilintideの配合剤**エキセナチド持続的皮下送達装置

 HbA1c低下作用が最も大きかったのはチルゼパチド(平均差-2.10%、95%CI -2.47~-1.74%、エビデンスの確実性High)で、2番目はmazdutide(同-2.09、-3.10~-1.09%、同High)、3番目がCagriSema(同-1.80、-2.87~-0.73%、同High)だった。

 空腹時血糖値の改善効果もチルゼパチドが最も大きく(平均差 -3.12mmol/L、95%CI -3.59~-2.6mmol/L、エビデンスの確実性High)、CagriSema 、orforglipronがこれに続いた。

体重減少だけでなく脂質プロファイルも改善

 体重減少効果はCagriSemaが最も大きく(平均差-14.03kg、95%CI -17.05~-11.00kg、エビデンスの確実性High)、2番目がチルゼパチド(同-8.47kg、-9.68~-7.26kg、同High)、3番目がretatrutide(同-7.87kg、-9.95~-5.79kg、同Moderate)だった。

 脂質プロファイルに対する影響についても検討したところ、PEG-loxenatideがHDLを上昇させ(平均差0.16mmol/L、95%CI 0.00~0.31mmol/L)、セマグルチドはLDL(同-0.16mmol/L、-0.30~-0.02mmol/L)と総コレステロール(同-0.48mmol/L、-0.84~-0.11mmol/L)を低下させた。トリグリセライドに関しては、ITCA 650(同-1.59mmol/L、-2.86~-0.32mmol/L)とチルゼパチド(同-0.89mmol/L、-1.64~-0.13mmol/L)で低下作用が確認された。

大半の試験で消化器症状の報告

 安全性に関しては、有害事象による試験脱落がリキシセナチド〔オッズ比(OR) 2.86、95%CI 1.48~5.51〕、セマグルチド(同2.61、1.56~4.37)、エキセナチド(同2.39、1.14~4.98)、チルゼパチド(同2.30、1.30~4.09)、リラグルチド(同2.15、1.26~3.69)でプラセボ群より多かった。

 副作用として最も多いのは消化器症状で、下痢はCagriSema、チルゼパチド、retatrutide、orforglipron、セマグルチド、efpeglenatide、デュラクルチド、リラグルチド、エキセナチドの試験で報告が多かった。悪心と嘔吐の頻度も、15剤のうちの大半でプラセボ群より多かった。

 今回の研究についてYao氏らは「15剤のGLP-1受容体作動薬の有効性と安全性を評価したNMAであり、われわれの知る限り、新規の薬剤を含めた最も総合的なシステマチックレビューである」と考察。さらに「成人2型糖尿病に対するGLP-1受容体作動薬の血糖コントロール効果と体重減少効果が確認できたが、消化器関連の症状は安全性上の懸念事項である」と付言している。

木本 治