中国・Hangzhou Normal UniversityのYunpeng Gu氏らは、2型糖尿病の合併例を含む非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者に対するSGLT2阻害薬5種類とGLP-1受容体作動薬4種類の相対的有効性をランダム化比較試験(RCT)37件・3,172例のシステマチックレビューおよびネットワークメタ解析で検討。その結果、プラセボに比べセマグルチド、リラグルチド、ダパグリフロジンの効果が有意に高く、中でもセマグルチドで有益性が大きかったとFront Pharmacol2023; 14: 1102792)に発表した。

肝脂肪・肝硬度、TGはセマグルチドで改善大

 Gu氏らは、医学データベースPubMed、EMBASE、Web of Science、Cochrane Libraryに2021年12月31日までに掲載された英語の論文を検索。18歳以上のNAFLD患者を対象にした、SGLT2阻害薬5剤(ダパグリフロジン、イプラグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジン、エンパグリフロジン)またはGLP-1受容体作動薬4剤(エキセナチド、リラグルチド、デュラグルチド、セマグルチド)のプラセボまたは実薬対照RCT 37件・3,172例をネットワークメタ解析に組み入れた。対象の約70%が2型糖尿病を合併していた。

 主要評価項目は各種の肝酵素および脂肪肝の検査値改善、副次評価項目は身体測定値、血中脂質値、血糖値とした。

 エビデンスの確実性が高い解析結果のみに限定すると、セマグルチド、リラグルチド、ダパグリフロジンでプラセボと比べて有意な改善効果が認められた。

 セマグルチドでプラセボと比べて有意な改善が認められた評価項目は、ALT〔平均差(MD)-14.70U/L、95%CI -24.79~-4.61U/L〕、AST(同-9.32U/L、-15.12~-3.52U/L)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GGT:同-16.56U/L、-27.30~-5.82U/L)、肝脂肪量(CAP値:同-15.57db/m、-29.29~-1.85db/m)、肝硬度(LSM値:同-3.08kPa、-3.39~-2.77kPa)、体重(同-8.14kg、-11.45~-4.84kg)、収縮期血圧(同-2.24mmHg、-4.20~-0.27mmHg)、トリグリセライド(TG:同-0.25mmol/L、-0.40~-0.10mmol/L)、HDLコレステロール(同0.05mmol/L、0.01~0.09mmol/L)、HbA1c(同-0.93%、-1.23~-0.63%)だった。

空腹時血糖、インスリン抵抗性はリラグルチド、ダパグリフロジンで

 リラグルチドは、ALT(MD -8.30U/L、95%CI -16.61~-0.43U/L)、皮下脂肪組織(同-30.27cm2、-41.54~-19.01cm2)、BMI(同-1.49、-2.39~-0.59)、空腹時血糖(同-0.77mmol/L、-1.19~-0.35mmol/L)、HbA1c(同-0.50%、-0.81~-0.19%)、インスリン抵抗性指数(HOMA-IR:同-1.57、-2.18~-0.96)でプラセボと比べて有意な改善が認められた。

 ダパグリフロジンは、ALT(MD -9.94U/L、95%CI -18.42~-1.46U/L)、体重(同-3.48kg、-5.88~-1.08kg)、空腹時血糖(同-0.75mmol/L、-1.12~-0.39mmol/L)、食後血糖(同-2.14mmol/L、-3.67~-0.61mmol/L)、HbA1c(同-0.72%、-1.01~-0.42%)、HOMA-IR(同-0.84、-1.53~-0.15)でプラセボと比べて有意な改善が認められた。

 拡張期血圧総コレステロールLDLコレステロールに関しては、プラセボと比べて有意な改善が認められた薬剤はなかった。

 以上を踏まえ、Gu氏らは「現行のガイドラインでNAFLD治療薬として明確に推奨されたものはないが、今回のネットワークメタ解析からSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬はNAFLDに有効な可能性があり、特に2型糖尿病合併例に対する治療選択肢となりうることが示唆された」と結論。「エビデンスの確実性が高い解析結果によると、NAFLD患者の肝酵素、脂肪肝、体重、BMI、血圧、血中脂質値、血糖値の改善において、GLP-1受容体作動薬はSGLT2阻害薬と比べて有効性が高いと考えられた」と付言している。

(太田敦子)