インタビュー

東京の医療逼迫を懸念
~五輪開催に矛盾-国際医療福祉大・松本教授~

 新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて、東京都は12日から4度目の緊急事態宣言となった。感染症に詳しい国際医療福祉大学の松本哲哉教授(感染症学)は、今後も感染者数は増加が続き、1日2000人を超える可能性も高いと予想する。「インド株(デルタ株)、五輪、夏休みなど感染拡大につながりやすい条件が重なるため、大阪で深刻であった第4波のような状況が東京でも起こり得る」と心配している。

松本哲哉・国際医療福祉大学教授

松本哲哉・国際医療福祉大学教授

 緊急事態宣言下での五輪開催も問題含みだ。松本教授は「緊急事態と五輪開催には基本的な矛盾があるので、薄氷を踏みながら開催する大会になるだろう」と予想する。無観客でも社会全体の高揚感によって接触の頻度が高まり感染者数が増える可能性や、選手村で集団感染(クラスター)が起きるなど、「起こり得る最悪のシナリオを想定して対応を検討し準備しておく必要があるが、残された時間はわずかである」と懸念している。

 ワクチン接種の拡大で高齢の感染者や重症者の数は減少しているが、松本教授は「40~50代の入院患者が増えており、酸素が必要な中等症患者も多く、一部の方は重症化し人工呼吸器管理となっている」と指摘する。「中等症の患者でも医療機関の負担は大きいので、重症者数だけで医療の逼迫(ひっぱく)度を評価するのは過小評価につながりかねない」と強調する。

 期待されるのは、ワクチン接種のさらなる拡大だ。しかし、「副反応などを恐れて接種に消極的な人たちは一定程度存在する。中でも若年層ではその比率は高い」と指摘する。その上で、ワクチン接種は自らを守るだけでなく、周囲や家族への感染を防ぎ、ひいては社会全体の感染抑制につながるものだという認識を広めていく必要があると強調している。

 感染の抑制には政府が打ち出す対策への信頼と個々の行動の変化が必要だが、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が繰り返されても納得のいく説明が無く、むしろ反発や拒否感が目立つ。松本教授は「政府は個人個人が何をすべきなのか国民に直接届くメッセージを発信し、対策に必要な金銭的な補償を行うとともに、有効な感染対策の具体案を示すべきだ」と訴えている。(喜多壮太郎)

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