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大規模イベントでの感染症防止策が急務
~コロナ、はしか、風疹、髄膜炎菌感染症など~

 新型コロナウイルスの感染が国内外で収まったとは言えない中、東京五輪のために来日する外国人選手の検疫態勢の再構築や各競技会場での観客受け入れ態勢の整備が急がれている。世界中から多くの選手や関係者が集まる「マスギャザリング」(同じ目的で大勢が集まった状態)のイベントでは、過去にも感染症が会場に持ち込まれて別の地域の参加者に感染し、拡大する問題が生じていたためだ。

感染症の流入と拡散=加來浩器教授のプレゼン資料より

 今回の五輪でも新型コロナが問題になる前から、はしかや風疹、髄膜炎菌感染症=用語説明=などへの警戒を感染症関連の学会などが呼び掛けてきたが、浸透度は十分と言えない。このため五輪開会を控えた時期に、専門医などによるオンラインシンポジウムを開催して、注意喚起を図った。

 もちろん、新型コロナを無視することはできない。愛知医科大学の三鴨廣繁教授は、新型コロナの重症化率が低い20歳未満についても、感染により多量のウイルスを排出するために周囲に感染を拡大させやすいと報告して若年層への対策徹底を訴えた。

 また、重症化した場合に肺炎など呼吸器疾患が注目されてきたが、血栓による血管の閉塞(へいそく)やそれに伴う循環器や脳の疾患、腎臓や肝臓の機能障害も警戒する必要がある他、「これらの疾患は高齢者以外でも発症する可能性がある。コロナ=高齢者問題と考えてはいけない」と指摘した。

 一方、防衛医科大学校の加來浩器教授は「マスギャザリングのイベントでは、世界各国から集まる参加者が自国で広がっている感染症を持ち込み、参加者同士や開催地の人に感染を拡大させてしまう危険が付きまとう」と指摘。さらに、大会後に帰国した感染者が新しい感染症として拡大させることへの警戒も重要と訴えた。

海外での感染症発生事例=加來浩器教授のプレゼン資料より

 その上で、コロナ対策で発生が抑えられている、はしかや風疹は一度感染が広がると対策が難しいことを指摘。さらに、国内では患者がほとんど出ていない髄膜炎菌感染症やマラリアなどは治療経験の少ない国内医療機関での診断や治療が遅れがちとして、「日本側から見ればこれらの『輸入感染症』への警戒も欠かすことはできない」と訴えた。

 対策としては、入国する関係者へのコロナ以外の感染症へのワクチン接種徹底はもちろん、日本側スタッフへのワクチン接種や予防法の徹底なども、今からでも早急に進める必要がある、と指摘した。

 ◇用語説明

 「髄膜炎菌感染症」
 サハラ以南のアフリカやアジア、オーストラリアなどで流行しており、日本では集団生活をする青年層の発病が多い。飛沫感染し、潜伏期間は2~4日とされている。発病すると発熱や嘔吐(おうと)に始まり、脚に発疹が急速に広がる。状況によっては意識障害やけいれんを引き起こし、死に至ることもある。(喜多壮太郎)

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