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飲み過ぎ?熱中症?
~危険性高い夏の「路上飲み」~

 緊急事態宣言による飲食店での酒類規制で、駅前や公園に集まっての「路上飲み」が新型コロナウイルスの感染防止の観点から問題になっている。アルコールによる発汗や代謝が増す「亢進」という現象が起き、脱水症や熱中症を引き起こす危険性が高くなるため、専門医は今夏の「路上飲み」を控えるように呼び掛けている。

「路上飲み」自粛を求める東京都のポスター

「路上飲み」自粛を求める東京都のポスター

 アルコールの利尿作用はカフェインよりも強い上、体温を上昇させるために発汗作用も増進させ、体内の水分は急激に失われる。アルコールが体内に吸収されるとアセトアルデヒドという有機化合物に分解されるが、その際にも体内の水分を消費する。「空調が効いた屋内や、風通しの良い木陰でも、それなりに体内の水分は減少するが、路面や周囲の建物から熱が放散される輻射=ふくしゃ=熱の強い場所での飲酒は、非常に危険な行為です」。 熱中症に詳しい済生会横浜市東部病院の患者支援センター長兼栄養部部長の谷口英喜医師は説明する。

 「毎年ビーチや河川敷で、飲酒による脱水症から熱中症になって救急搬送される若い人が少なくない。花見の時期なら大丈夫な酒量でも、夏場は輻射熱で地表近くの気温が高く、多くの発汗が促されるからだ」という。病院に搬送されても、今年は問題がある。「脱水症は発熱を伴うことも多いので、新型コロナウイルス感染者と症状が似る。このため、搬送段階でコロナ感染の有無を確認する必要がある。深刻な状況では、治療開始までの分単位の差が予後を左右することもあるので、特に気を付けてほしい」と強調する。

 谷口医師が特に警戒しているのが、駅前の広場や公園などでの「路上飲み」だ。アスファルト路面や建物からの輻射熱、周囲の建物のエアコンからの排熱により、局所的には体温を上回り、熱中症の危険性が高まるからだ。しかも、飲食店内のように、具合が悪くなっても店員の助けも期待できない。

 「路上での飲酒は急激な脱水症を引き起こし、頭痛や意識レベルの低下などが起きる。しかも、これらの症状を飲酒のためだと誤解したり、酩酊(めいてい)して気が付かないまま飲み続けたりして、重症化してしまう。あらかじめ水分を含んだつまみや食事を用意することは少ないだろうから、脱水の危険がより高まってしまう」と指摘する。

海水浴場=AFP時事

海水浴場=AFP時事

 路上で飲んでいる間に症状が出なくても安心はできない。遅れて発症する熱中症だ。帰宅してから脱水症が悪化し、二日酔いなどと混同してそのまま寝ていて、翌朝に深刻な状態になることもあるという。「特に元気な20代に、この傾向が見られる。おかしいと思ったらアルコールやカフェインを含まない麦茶などで1~2リットル程度の十分な水分を補給し、それでも症状が収まらない場合は、急いで医療機関で受診してほしい」と呼び掛けている。

 アルコールを分解するには、どの程度の水分が必要かを知っておくことも脱水症の予防になる。アルコール度数の低いビールは、同量の水を並行して取る必要がある。ワインや日本酒なら2倍だ。アルコール度数が30~40%の蒸留酒をストレートで飲む場合はほぼ10倍、何かで割って飲むなら2~3倍が基本という。

 「アルコール飲料を飲むと口が渇くのだが、この渇きをアルコールで解消しようとすれば、ますます脱水が進んでしまう。渇きを感じる前に定期的に水分補給を欠かさないことが大切。バーでも強い酒には水がチェイサーとして添えられる。飲酒中は水分補給を徹底してもらいたい」と訴えている。(喜多壮太郎)

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