周囲のサポートが不可欠―高齢者の熱中症
室温管理と水分補給がカギ 帝京大学医学部付属病院救急科高度救命救急センター 三宅康史教授
毎年、夏になると熱中症で亡くなる高齢者が後を絶たない。今シーズンは新型コロナウイルスの感染拡大があり、その影響は未知数だ。外出を控えた結果、体力が落ちたり、暑さに慣れていなかったりして、リスクが高まる可能性もある。帝京大学医学部付属病院(東京都板橋区)救急科高度救命救急センターの三宅康史教授は「熱中症はしっかり暑さ対策すれば予防できますが、新型コロナウイルスの影響で、人と会う機会が極端に減って孤立する高齢者が増えているのが心配です。家族や周囲は心配りをしてください」と呼び掛ける。
室温管理と水分補給はしっかりと
▽放置すれば死に至る
熱中症は高温多湿の環境にいたことが原因で起こる体調不良。総務省によると、2019年5~9月に熱中症で救急搬送された人は全国に累計7万1千人超で、65歳以上の高齢者が52%と過半数を占めた。
典型的な症状は、めまい、立ちくらみ、ふくらはぎのこむら返り、頭痛、吐き気、倦怠(けんたい)感など。重症になると意識障害や全身のけいれんを起こし、命を落とすこともある。三宅教授は「これらは熱中症に限った症状ではありませんが、暑い環境で具合が悪くなった場合は、まず熱中症を疑います。放置すれば死に至るという認識が必要です」と注意を喚起する。
呼び掛けても応答がなければすぐに救急車を呼ぶ。応答があれば冷房の利いた部屋に移動させ、衣服を緩め、ビニール袋に入れた氷や保冷剤を首の付け根や脇の下、太ももの付け根に当て、できるだけ早く体温を下げる。冷たい水を自力で飲めない場合は、早めにかかりつけ医を受診する。
▽予防が第一
熱中症はクーラーを積極的に使うなどして環境を整えれば予防できる。しかし、新陳代謝が低下した高齢者は暑さを感じにくく、室温が上がっても気付かずにクーラーをかけずにいる人も多い。高齢者がいる家庭では、居間と寝室に温度計を置き、室温を小まめにチェックして、適正温度に調節することが重要だ。
脱水を防ぐために水分は積極的に取りたいが、スポーツドリンクには塩分や糖分が含まれているため、腎臓病や高血圧、糖尿病などの持病がある高齢者が日常的に取る水分は、お茶や水の方がよい。1日3食取れている場合は、無理にたくさん飲もうとせずに、10時と3時にお茶を飲み、寝る前にコップ1杯の水を飲む程度でよい。
三宅教授は「離れて暮らす家族は定期的に連絡を取り、室温や体温、血圧、体重のチェックなどを遠隔サポートするだけでもリスクが減らせます。猛暑になる前に、エアコンが故障していないか、衣替えが済んでいるかを確認するとよいでしょう」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2020/09/20 07:00)