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虫垂がんは珍しい病気で、大腸がん全体の1%にも満たないという。虫垂炎との区別が難しく、早期発見が極めて困難なため、虫垂炎として手術をして初めて、がんが見つかるケースも少なくない。帝京大学ちば総合医療センター(千葉県市原市)外科の幸田圭史教授は「虫垂がんは、内視鏡での診断が困難なことが多いため、大半が進行してから発見されます」と話す。
虫垂炎かと思っていたら、がんであることも
▽虫垂炎に似た症状
虫垂は右下腹部の盲腸の下側にある突起だ。盲腸や結腸、直腸と共に大腸の一部だが、虫垂がんは大腸がんとは別に分類されている。幸田教授は「虫垂がんは、通常の結腸や直腸にできるがんとは違い、消化管などに多発する神経内分泌腫瘍や、低分化型がんという粘液度が高く転移しやすいがんであることが多いのが特徴です」と説明する。
虫垂がんでは、虫垂炎と同じように発熱や右下腹部痛が起こることも多く、症状だけで判断するのは難しい。抗生物質で炎症を抑えた後に、腹部超音波検査やコンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)検査などが行われ、そこで初めて腫瘍が確認される場合もある。中には虫垂炎として手術をし、術後の病理検査でがんが判明するケースもある。虫垂には内視鏡が入らないため「腫瘍がありそうだと分かっても、それが良性なのか悪性なのか判断できないので、術前の確定診断は困難なことが大半です」と幸田教授。
▽がんを想定した治療を
早期発見の難しさは予後にも表れている。幸田教授によると、診断から5年後の生存率は、ステージやがんのタイプによっても異なるが50~70%であり、結腸や直腸がんに比べると低く、再発も多い。虫垂がんが進行して虫垂が破裂すると、腹腔(ふくくう)内にがん細胞が散らばる腹膜播種(はしゅ)を起こしたり、リンパ節への転移や、血液にがん細胞が乗って、肝臓や肺に転移したりすることもあるという。そのため、幸田教授は「腫瘍があると分かったら、あらかじめ、がんを想定した手術を考えた方がいいと思います」と話す。
虫垂がんは一般的な健康診断ではまず見つからない。「右下腹部痛がたびたびある、何度も抗生物質で虫垂炎の症状を抑えているという人は、超音波やCT検査ができる消化器の専門医で、一度詳しい検査をしてください」と幸田教授はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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