発熱 家庭の医学

 発熱して体温が38~40℃にも及び、朝は多少下がっても午後に上昇するか、一日中高熱が持続して解熱しない場合には、早めに診察を受けたほうがよいでしょう。高熱の原因としては、インフルエンザ、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症、肺炎、胆嚢(たんのう)炎、腎盂(じんう)腎炎、感染性心内膜炎や敗血症などがあげられます。最近では、インフルエンザに対する特効薬もありますが、時期をのがさずに服用しなければ効果が期待できませんので、早めに受診して正しい診断を受けることが重要です。

 一般的には、細菌やウイルスなどの病原体の感染が発熱の原因になっていることが多く、細菌性感染には適切な抗菌薬を使用し、ウイルス感染の場合には、からだを十分に休めて抵抗力を強めることでおさまります。心臓病に伴う感染性心内膜炎の場合には、細菌感染が原因となりますが、通常よりも多くの抗菌薬を長期に用いる必要があるため、早期の正確な診断が重要です。
 高熱が出る前には、急にさむけを感じたり、ふるえがきたりしますので、一時的に体温が下がっていたとしても注意が必要です。

 また、高齢者ではふだんも体温が低くなる傾向があり、病気にかかっても、若い人にくらべて発熱の程度が弱い場合があります。それに加え、病気の典型的な症状がなく、なんとなく元気がないとか食欲がないといった症状が、重病のはじまりとなることもあり、発見が遅れがちです。抵抗力が弱いため、早めの処置が必要であり、特に心臓などに慢性の病気のある人では、手当てが遅れると症状が急激に悪化するおそれがあります。
 逆に小児では脱水になりやすいため、それに伴って発熱もひどくなりがちです。高齢者と同様に抵抗力が弱く、特に乳幼児では、苦しみを表現できず、不機嫌や泣くだけのことがありますので、いつもとようすが違うときには十分に注意する必要があります。
 このほかに、組織のこわれる病気として各種のがんや膠原(こうげん)病、薬物によるアレルギー反応で発熱することがあります。

■発熱
症状病名そのほかの症状など
頭痛を伴うインフルエンザだるい、関節痛、鼻汁、せき・たん
感冒(かぜ症候群)だるい、くしゃみ、鼻汁、のどの痛み、せき・たん、吐き気、腹痛
のどの痛みを伴う急性咽頭炎せき、血たん
急性喉頭炎声がれ、せき、たん
急性扁桃炎嚥下困難
せき、たんを伴う急性気管支炎
肺炎疲れやすい、胸痛、食欲がない、息切れ
耳の痛み、はれを伴う急性中耳炎発熱、耳だれ、耳閉感、めまい
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)耳下部のはれ・痛み、発熱
胸痛を伴う胸膜炎息切れ、深呼吸やせきに伴う痛み、からせき
心膜炎深呼吸や体動に伴う痛み、息切れ、疲れやすい
腹痛を伴う急性胃腸炎下痢、嘔吐、発熱
急性虫垂炎右下腹部痛、押さえると痛む、吐き気・嘔吐
急性腹膜炎吐き気・嘔吐、便秘、腹壁の緊張
胆管炎右上腹部痛、吐き気
胆嚢炎右上腹部痛、吐き気・嘔吐
発疹を伴う麻疹(はしか)口腔内や舌の白い斑点、全身の発疹、のどの痛み
風疹のどの痛み、こまかく赤い発疹、だるい
水痘(水ぼうそう)水疱とかさぶた、かゆみ
薬疹薬の服用、全身の発疹、微熱
腰痛を伴う腎盂腎炎背中をたたくと片側が痛む、尿の濁り
頭痛を伴う髄膜炎嘔吐、意識障害・失神、吐き気
脳炎意識障害、吐き気・嘔吐
熱中症意識障害・失神、のぼせ、尿が少ない、吐き気
動悸感染性心内膜炎脈が速い
敗血症出血傾向、頭痛、さむけ


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹