下腹部痛 家庭の医学

 右下腹部が痛むときに多いのが急性虫垂炎で、圧迫して痛みが増し、吐き気があれば、すぐに医療機関を受診すべきです。腸捻転(ねんてん)や腸閉塞(イレウス)では激痛を生じ、排便がなくなり腹がはります。子どもの右下腹部によく起こる腸重積症も腸閉塞の一つです。便秘で下腹部痛をうったえることがあり、大腸憩室(けいしつ)があると起こりやすくなります。
 尿管結石の場合は、急に起こる激痛が内股(うちまた)や陰部に放散し、血尿が出ます。前立腺肥大や前立腺がんの男性では尿道が狭くなり、また脳血管障害でも尿が出なくなることがあります。このような尿閉の人では、膀胱(ぼうこう)が尿で充満し、下腹部痛を生じます。ふつうは排尿がないので気づかれますが、脳血管障害を起こした人や高齢者では見のがされる場合があり、注意が必要です。
 女性の場合、卵巣嚢腫(のうしゅ)の茎捻転(けいねんてん)や子宮外妊娠破裂では、左右いずれかに激痛が起こり、すぐに医療機関を受診すべきです。子宮内膜症や子宮筋腫でも下腹部が痛み、月経の量が多くなったり、貧血になったりします。

■下腹部痛
症状病名そのほかの症状など
吐き気や嘔吐あり急性虫垂炎右下腹部痛、押さえると痛む、発熱
急性腸炎下痢
腸捻転激痛、排便なし、腹がはる
腸閉塞(イレウス)腹がはる、便秘、冷や汗
腸重積右下腹部痛
吐き気や嘔吐なし便秘くり返す、腸にガスがたまる
大腸憩室症押さえると痛む、くり返す
潰瘍性大腸炎粘血便、下痢、発熱、食欲不振、やせ
尿管結石背中をたたくと痛い、血尿、片側性
尿閉排尿なし、腹がはる
膀胱炎頻尿、排尿時痛、血尿、残尿感
精巣上体炎睾丸の辺縁が痛い、陰嚢内の痛みを伴うしこり
異所性妊娠(子宮外妊娠)不正出血、腰痛、破裂するとショック
卵巣嚢腫の茎捻転片側の激痛
子宮内膜症月経の周期で痛みが変化、月経過多、下腹部圧痛
子宮筋腫貧血、月経過多、下腹部のしこり
流産性器出血


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹