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サイエンスとアートの両面を重視
医療人材育成のカギ-高知大学医学部

 高知大学医学部は、前身の高知医科大学として1976年に開学した。建学の精神は「敬天愛人」と「真理探究」。以来40年以上にわたって連綿と受け継がれてきた二つの精神を菅沼成文医学部長は、近代アメリカ医学の基礎を確立したウィリアム・オスラー医師が表現した「The practice of medicine is an art, based on science(医療は科学に基づくアートである)」に重ね合わせる。
 そして、「科学である医学(サイエンス)と患者さんに対する人間としての姿勢(アート)を含めて、初めて医療となります。だからこそ、サイエンスとアートの両面を重視することが、医療を支える人材を育てる上で最も大切だと考えている」と力を込める。

インタビューに応える菅沼成文医学部長

 ◇「高知ブランド」を発信

 高知大学医学部の教授陣は常に全国公募で選ばれる。そこには「一流の教育・研究環境を醸成する」狙いがある。

 そんな教授らの持つ個々の研究に対するポテンシャルを発揮する場として2009年に誕生したのが「先端医療学推進センター」だ。「独創的医療部門」「再生医療部門」「情報医療部門」「社会連携部門」「先端医工学部門」「臨床試験部門」から成る。

 菅沼氏は「センターでは、基礎研究者と臨床医が非常にいい関係を築きながら、世界と地域に貢献する成果を生み出したいという強い思いで、高知大学オリジナルの最先端医療研究を進めています」と語る。

 すでに、研究成果の一端は実用化に至り、ぼうこうがん、消化器がん、乳がんなどの診断や術中同定に用いる光線医療技術は保険適用され、「高知ブランド」として国内外に浸透しつつある。

 ◇リサーチマインドを育む

 先端医療学推進センターは、医学科学生の教育の場としての役割も担っている。2年生進級時に選択必修の課題探求科目から「先端医療学コース」を選ぶと、センター内の各部門に配置された研究班のいずれかに所属して、原則4年生までの3年間、特定の課題の研究を異年次の学生や教員らと一緒に週2日行っていく。目指すのは、大学院修士課程医科学専攻修了者と同等の研究遂行能力の獲得で、11年度に始まったプログラムだ。

高知大医学部のキャンパス

 「医学教育においてどういう方法をとったら学生が効果的に学べるのか。これは、知識として習得しなければならない事柄がますます増えてきている現状にあって、非常に難しい問題ではあります。しかし、医療人として欠かせないのは、生涯を通じて真理の探究を続ける心構え。つまり自身のリサーチマインドです。その心構えを早い段階から育むために先端医療学コースを提供しているわけです」

 中には、病棟で出会った患者の手術前後の変化を目の当たりにし、高齢者が術後に認知症のような症状をきたす病態の解明とその予防戦略の研究に着手。この研究課題が、日本静脈麻酔学会の最優秀演題賞を受賞し、米国麻酔科学会でも発表の機会を与えられた学生もいる。

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