医学部トップインタビュー

平和を希求し、創造性を育む
与えられた才能を人々のために-広島大学医学部

 広島大学医学部は1945年3月に県立医学専門学校として開校、原爆が投下される前日に郊外に疎開したため、教員も学生も被ばくを免れたという歴史がある。戦後、広島大学に組み込まれてから現在に至るまで放射線医学研究に重点を置いてきたのも、広島という土地柄ならでは。2014年には文部科学省のスーパーグローバル大学のトップ型指定校に選出され、世界レベルを意識した教育改革も進めてきた。秀道広医学部長は「学生たちには、与えられた才能を自分のためだけに使うのではなく、より多くの人を救うことを喜びとする医療人になってほしい」と話す。

インタビューに応える秀道広医学部長

 ◇放射線医学で世界をリード

 広島大学医学部は自由と平和を希求する精神を掲げ、広島から世界に向かう創造性を育む教育を心掛けてきた。

 「原爆投下という歴史的な出来事の経験を元に、放射線医学への取り組みでは世界をリードし、昨年受審した日本医学教育評価機構(JACME)による医学教育分野別認証評価で高い評価を受けました」と秀医学部長。「放射線健康リスク科学」では、放射線が人体に与える影響から放射線災害まで学び、夏休み期間中には長崎大学や福島大学と連携した夏季セミナーを開催している。

 ◇積極的に外部講師を招く

 すべての学生が修得を義務付けられている「平和科目」では、海外派遣経験を持つ自衛隊医務官による講義等も取り入れ、幅広い視点から平和に関することを学ぶ。また、将来リーダーとして大きく羽ばたいてほしいとの願いを込めて、国際的に活躍している著名人たちによる講義とワークショップからなるグローバルリーダー概論を開講するなど、学生たちが幅広く学べる環境が提供されている。

 ◇レベルの高い研究実習

 基礎研究のための「研究室配属」は多くの大学で導入されているが、広島大学医学部では比較的高学年の4年生で行われる。その間は他の講義、実習は一切なく、テーマに基づく研究に専念するという。

 4カ月の研究期間の終わりには、2日をかけて研究成果を発表。ディスカッションし、優秀な発表は表彰される。「各研究室が高いエネルギーを注力し、学生たちもいい研究をしており、私たちの誇りとする内容です」

 また、国際化への対応として、すべての授業を英語で学ぶことができるよう、講義のスライド、プリントはすべて日英併記にしている。

広島大学医学部

 ◇多職種連携で学ぶチーム医療

 医学部のある霞キャンパスには、医師、薬剤師、保健師、看護師、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士などのすべての医療系学科コースがそろう。こうした環境を生かして、多職種が交流しながら学ぶ「インタープロフェッショナル・エジュケーション」を導入している。

 「1年次の早期体験実習では、学科を超えたチームで県内各地の病院に行き、見学型実習を行います。高学年になると、臨床症例に基づいて多職種の学生からなるチームでディスカッションを行い、診断やケアの内容を考えて発表します」

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