「光老化」を防ぐ
~肌や目の紫外線対策(名古屋市立大病院 森田明理教授)~
太陽の紫外線を長時間、無防備に浴びていると、肌にしみやしわができる。「光老化」とはこうした光の害による老化現象を指し、長期的に皮膚や目の健康を害する場合もある。
名古屋市立大病院皮膚科の森田明理教授は「紫外線が皮膚に当たると体に必要なビタミンができる一方、光老化が進みます。紫外線は健康に役立つ面もあるので常に遮るのではなく、浴び過ぎないように上手に対策することが大切」と話す。

日焼けしてからの手入れでは遅い
◇しみ、しわの原因に
太陽光線は、紫外線(UV)、可視光線、赤外線の三つに分かれる。このうち、光老化に最も大きく影響するのが紫外線だ。また、可視光線の一部であるブルーライトや近赤外線も光老化に関係している。
紫外線は波長が長いほど皮膚の奥まで届く。長波長紫外線(UVA)と中波長紫外線(UVB)は地表に到達し、UVBは表皮まで、UVAはその奥の真皮まで入り込む。
皮膚には太陽光線を防御する仕組みが備わっている。中でも強力なのが、紫外線を吸収するメラニン色素だ。森田教授は「UVBが当たると、皮膚の色素細胞がメラニン色素を作り、周囲の表皮細胞に運んで肌を守ろうとします。日焼けを繰り返すと大量に作られたメラニンが表皮にたまり、しみができます」と説明する。「UVAや近赤外線を浴び続けると真皮の膠原(こうげん)線維(コラーゲン)を分解する物質などが作られ、肌の弾力やみずみずしさを失わせる。皮膚を保つ力が弱くなり、しわやたるみができるのです」
◇赤くなる日焼け注意
皮膚にUVBが当たると、カルシウムの吸収を助けるビタミンDが体内で合成される。ビタミンDが不足している人が多いとの報告もあり、日光を避け過ぎるのも問題だ。季節・地域などにより異なるものの、正午前後なら顔や腕に5分~数十分程度、紫外線を浴びることで1日のビタミンDの必要量を満たすと推計されている。
一方、長年にわたり紫外線を多く浴びた場合、皮膚がんや白内障などを発症する可能性もある。「皮膚がんリスクは、生涯に浴びる総紫外線量が多いほど増加します。無防備に紫外線を浴びて、肌が赤くなるような日焼けをしないように注意が必要です」
紫外線対策は、日傘や帽子、サングラスなどを使用する。日常的に日焼け止めを使うのもよい。「肌の光老化を防ぎ、見た目の美しさを保つことも長寿社会の活力につながります」
国内の紫外線量は、長期的に増加傾向にある。森田教授は「日常生活では紫外線を長時間浴びないように注意し、屋外のレジャーや運動ではしっかりと紫外線対策をしましょう」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/07/15 05:00)
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