2024/11/05 16:00
オイシックス・ラ・大地、東京慈恵医科大と共同臨床研究を開始
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【研究成果のポイント】
全国住民調査にもとづき、COVID-19拡大後における、かかりつけ医の有無や属性と関連する臨床的・社会的要因を国内で初めて明らかにした。
かかりつけ医を持っていない人の特徴
男性、慢性疾患がない、社会的孤立状態にある、ヘルスリテラシーが低い。
かかりつけ医が病院の医師である人の特徴
男性、慢性疾患を持っている、健康関連QOLが低い。
東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 臨床疫学研究部の青木拓也講師、松島雅人教授らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大後のプライマリ・ケアに関する全国的な住民調査を実施し、1,757人を対象者としてかかりつけ医の有無やそのかかりつけ医が診療所勤務か病院勤務かなどの属性と関連する臨床的・社会的要因を明らかにしました。
今般、COVID-19パンデミックをきっかけに、身近で何でも相談できる医療(プライマリ・ケア)を担う「かかりつけ医」の役割に大きな注目が集まっています。医療制度議論においても、かかりつけ医機能の強化が重要な論点になっていますが、かかりつけ医の有無や属性と関連する要因については、これまで十分な検討が行われていませんでした。
本研究は、COVID-19拡大後において、かかりつけ医の有無や属性と臨床的・社会的要因との関連を分析した国内初の調査であり、かかりつけ医を持っていない人(746人)の特徴として、男性、慢性疾患がないこと、社会的孤立状態にあること、ヘルスリテラシーが低いことが同定されました。さらに、かかりつけ医が病院の医師である人(227人)の特徴として、男性、慢性疾患を持っていること、健康関連QOLが低いことが同定されました。
本研究は、かかりつけ医を持つ上での社会的格差や診療所と病院の機能分担に関する知見を提供するものであり、かかりつけ医の普及をはじめ、かかりつけ医機能の制度整備を推進する上での基礎資料となるものです。
本研究の成果は、2023年9月27日にBMC Primary Care誌に掲載されました。
研究の詳細
1.背景
プライマリ・ケアは、住民のあらゆる健康問題に包括的かつ継続的に対応し、多職種や高次医療機関、地域住民との協調を重視するヘルスケアサービスです。国内外の研究において、質の高いプライマリ・ケアは、医療の質、健康アウトカム、医療の効率性、健康の公平性の向上に繋がることが報告されています。
我が国でも、COVID-19パンデミックをきっかけに、プライマリ・ケアを担う「かかりつけ医」の役割に大きな注目が集まっており、かかりつけ医機能の強化が、医療制度議論における重要な論点になっています。しかし、かかりつけ医の有無や属性に関連する要因については、これまで十分な検討が行われていませんでした。
そこで本研究は、COVID-19拡大後の全国住民調査にもとづき、かかりつけ医の有無や属性と臨床的・社会的要因との関連を明らかにすることを目的としました。
2.手法
本研究は、COVID-19パンデミック下の2021年5月に実施されたプライマリ・ケアに関する全国調査(National Usual Source of Care Survey: NUCS)のデータを用いて実施されました。NUCSは、代表性の高い日本人一般住民を対象とした郵送法による調査研究です。民間調査会社が保有する約7万人の一般住民集団パネルから、年齢、性別、居住地域による層化無作為抽出法を用いて、20〜75歳の対象者を選定しました。
我が国におけるかかりつけ医の定義注1)および国際的にかかりつけ医と対応するUsual Source of Care (USC)の定義注2)をもとに、本研究では「体調が悪いときや健康について相談したいときに、いつも受診する医師」をかかりつけ医と定義して調査を行いました。また、かかりつけ医を持っている住民を対象に、その属性(診療所、病院)についても調査しました。さらに、住民の臨床的・社会的要因として、年齢、性別、婚姻状況、最終学歴、就業状況、世帯年収、社会的孤立(Lubben Social Network Scaleにより評価)、ヘルスリテラシー(Communicative and Critical Health Literacyにより評価)、慢性疾患の数、健康関連QOL(EQ-5D-5Lにより評価)を調査しました。
統計解析では、回帰モデル(多変量修正ポアソン回帰モデル)を用いて、まず前述の要因とかかりつけ医の有無との関連について分析を実施しました。次いで、かかりつけ医を持っている住民を対象に、同様のモデルを用いて、要因とかかりつけ医の属性との関連についても分析を行いました。
3.成果
1,757人を解析対象者としました(回答率 87.9%)。解析対象者のうち、1,011人(57.5%)がかかりつけ医を持っており、そのうちかかりつけ医が診療所の医師である者は769人(76.1%)、かかりつけ医が病院の医師である者は227人(22.5%)、その他は15人(1.5%)でした。
回帰モデルを用いた分析の結果、かかりつけ医を持っていることの出現割合比(Prevalence Ratio)は、女性(対男性) 1.12(95%信頼区間:1.02-1.23)、社会的孤立あり(対社会的孤立なし) 0.84(95%信頼区間:0.77-0.93)、ヘルスリテラシースコア 1.05(95%信頼区間:1.01-1.10、1標準偏差上昇当たり)、慢性疾患あり(対慢性疾患なし) 1.51(95%信頼区間:1.35-1.69)でした。すなわち、かかりつけ医を持っていない人の特徴として、男性、慢性疾患がないこと、社会的孤立状態にあること、ヘルスリテラシーが低いことが同定されました。
同様にかかりつけ医の属性について分析した結果、かかりつけ医が病院の医師であることの出現割合比は、女性(対男性) 0.71(95%信頼区間:0.54-0.94)、慢性疾患あり(対慢性疾患なし) 1.73(95%信頼区間:1.20-2.49)、健康関連QOLスコア 0.89(95%信頼区間:0.83-0.97、1標準偏差上昇当たり)、でした。すなわち、かかりつけ医が診療所の医師である人と比較した、かかりつけ医が病院の医師である人の特徴として、男性、慢性疾患を持っていること、健康関連QOLが低いことが同定されました。
4.今後の応用、展開
本研究は、かかりつけ医を持つ上での社会的格差や診療所と病院の機能分担に関する知見を提供するものであり、かかりつけ医の普及をはじめ、かかりつけ医機能の制度整備を推進する上での基礎資料となるものです。
今回の研究成果をもとに、かかりつけ医の有無・属性やかかりつけ医機能の発揮に寄与する要因について、さらに検証を続ける予定です。
5.脚注、用語説明
注1)
厚生労働省. 「かかりつけ医」ってなに?
https://kakarikata.mhlw.go.jp/kakaritsuke/motou.html
注2)
Primary Care Collaborative. Relationships Matter: How Usual is Usual Source of (Primary) Care?
https://www.pcpcc.org/sites/default/files/resources/pcc-evidence-report-2022_1.pdf
6.論文情報
掲載誌:BMC Primary Care
論文タイトル:Factors associated with the status of usual source of care during the COVID-19 pandemic: a nationwide survey in Japan
著者:Aoki T, Matsushima M.
DOI:10.1186/s12875-023-02148-9
*本研究は、JSPS科研費 JP20K18849の助成を受けたものです。
【メンバー】
東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 臨床疫学研究部 講師 青木拓也
東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 臨床疫学研究部 教授 松島雅人
以上
(2023/09/27 12:46)
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