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コロナ下で注目されたオンライン診療は患者にとってメリットがある。混み合う外来の待合室で待たされることがなく、地元を離れた後もかかりつけ医との関係を維持できる。利用する医師は「対面診療と質的な差はない」と話し、セカンドオピニオンに活用する大学病院もある。
オンライン診療のイメージ=メドレー提供
◇受診者は北から南まで
多くの人が苦しむアトピー性皮膚炎などは完治しない病気だ。しかし、一時的に症状が軽くなったり、消失したりする「寛解」の状態を保つことはできる。天下茶屋あみ皮フ科クリニック(大阪市)の山田貴博院長は「ここ数年で治療のバリエーションが増えている。寛解を維持できれば日常生活に支障はないし、寛解でなくても次のステップを用意できる」と言う。その上で、「そのためには治療の継続が大事だ。オンライン診療はそのための有効な手段だ」と話す。
花粉症のために同クリニックに通院していた30代の女性は、毎年2~4月は症状が重く、「外出したくない」というほどだった。そこで「花粉症に伴うアトピー性皮膚炎の悪化を避けたい」と沖縄・宮古島への移住を決意したが、「ずっと診てもらったクリニックに通えなくなる」という不安があった。
山田院長はオンラインで診療を続けることを提案した。移住後しばらくは2~3週間おきに「大丈夫だろうか」と話していたが、アトピー性皮膚炎と重なる炎症は改善していった。以前は肌の露出を避けていたが、「見てください」とオンライン上でタンクトップの姿を見せるようになったという。
山田貴博・天下茶屋あみ皮フ科クリニック院長
北海道稚内市の20代の大学生(男性)の出身は大阪だ。稚内という土地にあこがれて入学したが、1人暮らしや生活環境からくるストレスでアトピー性皮膚炎が悪化した。いったん大阪に帰って家族と共に同クリニックを受診。休学し治療を受けた後、復学することができた。治療はペンタイプの自己注射薬が中心で、山田院長はオンラインによって大学生の状態を管理する。症状は安定し、これから就職活動に取り組むという。
ただ、オンラインだけに頼っているわけではない。宮古島の女性も稚内の大学生も、帰省するたびに山田院長の診察を受けている。
◇患者を切り捨てないために
名古屋市在住の50代の女性は毎週、新幹線を使って同クリニックに来た。「お金と時間を費やして来てもらっても、診察時間は短い」。逆にプレッシャーを感じた山田院長は「これで対応すれば大丈夫だから」とオンライン診療を提案した。女性がアップロードした患部の写真がたまり、まるでアルバムのようになっている。それを見ると、症状が以前より改善したことが分かる。
「外来だけでは回っていかない。しかし、患者を切り捨てるようなことはしたくない」
オンライン診療は昼休みと外来終了後の午後6時以降だ。会社の会議室から入ってくるビジネスマン、帰宅直後に学校の制服を着たまま登場する生徒ら、受診の形もさまざまだ。
◇離れた被災地の患者を診る
オンラインによるセカンドオピニオンに取り組んでいるのが、東北大学病院(仙台市)のてんかん科だ。米国では主要な大学病院を中心に各地にてんかんを専門的に治療する医療機関があるが、日本では遅れている。
同科の中里信和教授は岩手県陸前高田市の出身。2011年3月に発生した東日本大震災の時、現地で支援に当たりたかったが、かなわなかった。同年6月、米国の友人医師から「オンライン診療は被災地支援に役立つはず」と、装置2台が送られてきた。1台を年に数回診察で訪れる被災地である宮城県気仙沼市の病院に置いて試したところ、うまくいったという。
ただ、医師法では対面診療の原則がある。このため、オンライン診療では毎回、現地の医師の立ち会いを必要としていた。中里教授は「対面でもオンラインでも診療の質に差はない」と考え、主治医の同席が不要なオンライン診療を模索した。厚生労働省とも相談した結果、オンラインによるセカンドオピニオンの形式をとることにした。保険適用にはならないため自由診療であり、薬の処方や生活指導も直接的には行えない。診察結果をあくまでもセカンドオピニオンとして地元の主治医に郵送して、その後の治療を修正してもらう方式だ。
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