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◇肝臓・膵臓手術も視野に
導入当初からこの手術に取り組んできた慶応大学病院(東京都新宿区)院長の北川雄光教授(消化器外科)はこれまでの実績を踏まえ、「制約された視界の中で、入り組んだ血管や胆管・膵(すい)管の処理が難しいとされた肝臓や体の奥にある膵臓などの手術にも適用が拡大されていくだろう」と将来への展望を示す。同時に、「手術する医師側には十分な経験と知識、専用機材の使用に熟達することなどが欠かせない」と指摘する。
◇少ない患者への負
腹腔鏡手術は、基本的に患者の体に直径数ミリから1センチ程度の小さな穴を複数開ける。次に、先端に高感度カメラを装着した腹腔内視鏡と、先端部に鉗子やはさみなどを装着したマジックハンドのような機材をこの穴から差し込み、カメラからの映像を見ながら機材を操作し患部の切除や縫合を行う。カメラや機材を動かす空間を作るため、多くの場合は穴から炭酸ガスを送り込んで患部周辺を膨張させることが多い。
◇若手医師らの努
「私が医者になった1980年代後半には、手術例は海外では報告されていたが、日本では安全性などが疑問視されていた。1987年に比較的術式が単純な胆嚢(たんのう)摘出手術に世界で初めての腹腔鏡手術が海外で行われ導入された後、90年代前半には国内でも導入する施設が増え、適用範囲も拡大された。それでも大学や施設によって取り組みに温度差があった。当時の慶応の外科は非常に積極的で、若手医師はそれぞれの臓器でどこまで内視鏡下手術ができるか、必死に取り組んだ」
北川院長は、当初の状況をこう振り返る。
北川院長によると、当時は現在と比べて腹腔鏡の解像度が低く、鉗子やメスなどの機材の操作性にも問題があった。そういう状況の中で少しずつ工夫を繰り返し、一つ一つ症例を積み重ねて成果を上げていくことで、腹腔鏡手術の評価を高めていった、という。「この積み重ねられた努力が、適用される臓器や手術法の拡大につながってきたと確信している」
(2018/07/16 16:00)
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