米・Washington University School of MedicineのSang Gune K. Yoo氏らは、51カ国12万例超の健康調査データを用い、心血管疾患(CVD)の二次(再発)予防を目的とするアスピリンの使用状況を検討。その結果、CVD既往例における再発予防目的のアスピリン使用率は、世界保健機関(WHO)が2025年までの達成目標としている50%を下回っていたとJAMA2023; 330: 715-724)に発表した。

全体で40%、低所得国の16%に対し高所得国は65%

 解析対象は、2013~20年に51カ国(低所得国7カ国、下位中所得国23カ国、上位中所得国14カ国、高所得国7カ国)で実施された健康調査に回答した、40~69歳の妊娠していない成人12万4,505例。なお、日本を含むアジアの高所得国、インド、中国は解析対象に含まれていない。

 各国の2019年における40~69歳の人口で重み付けした年齢中央値は52歳(四分位範囲45~59歳)、女性が50.5%(95%CI 49.9~51.1%)で、CVD既往例は1万589例(重み付け後8.2%、95%CI 7.7~8.6%)だった。

 解析の結果、CVD既往例における再発予防目的のアスピリン使用率は、全体で40.3%(95%CI 37.6~43.0%)だった。

 国別では、低所得国で16.6%(95%CI 12.4~21.9%)、下位中所得国で24.5%(同20.8~28.6%)、上位中所得国で51.1%(同48.2~54.0%)、高所得国で65.0%(同59.1~70.4%)と格差が大きく、高所得国では低所得国の4倍に上った。

使用率50%以上は中~高所得10カ国のみ

 WHOが目標とするCVD再発予防におけるアスピリン使用率50%以上を達成していた国は、高所得国では英国(70.9%)、米国(65.0%)、チェコ共和国(60.7%)、クウェート(54.7%)、上位中所得国ではヨルダン(75.1%)、トルクメニスタン(74.0%)、イラン(68.7%)、イラク(64.9%)、レバノン(53.3%)、ベラルーシ(51.7%)の計10カ国だった。低所得国および下位中所得国の30カ国で、目標を達成していた国はなかった。

 対象の背景別に見ると、CVD既往例におけるアスピリン使用率は高齢者(40~49歳22.6% vs. 60~69歳53.3%)、男性(女性31.0% vs. 男性39.0%)、高学歴の者(小学校未修了24.6% vs. 高等学校以上42.6%)、都市部の居住者(農村部25.1% vs. 都市部35.0%)で高かった。

 以上の結果を踏まえ、Yoo氏らは「CVDの再発予防を目的とするアスピリンの使用は、世界的に不十分であることが示された。エビデンスに基づくアスピリン使用の推進策を開発し、実践、評価する必要がある」と結論している。

(太田敦子)