オランダ・Erasmus MC Cancer InstituteのMarte A. M. van Hylckama Vlieg氏らは、静脈血栓塞栓症(VTE)を有するがん患者における抗凝固療法中止後のVTE再発リスクを報告した論文のシステマチックレビューとメタ解析を実施。「がん患者では抗凝固療法中止後のVTE再発率が高く、活動性がん患者に対しては可能な限り抗凝固療法を継続すべきとする現行のガイドラインを支持する結果が得られた」とeClinicalMedicine(2023; 64: 102194)に発表した。

抗凝固療法の至適継続期間は不明

 VTEを合併するがん患者に対する抗凝固療法の至適継続期間は不明である。現行の治療ガイドラインでは、3~6カ月の抗凝固治療が提唱され、がんの活動性が続いている限り、継続することが推奨されている。しかし、がん患者における抗凝固療法中止後のVTE再発率に関するシステマチックレビューはこれまでなかった。

 van Hylckama Vlieg氏らは、‟cancer and a first VTE"、‟anticoagulant therapy"、"completed at least 3 months"などをキーワードに、がん患者における抗凝固療法と抗凝固療法中止後のVTE再発率について報告した論文を、Medlineをはじめとする主要医学論文ータベースで、2023年2月16日まで検索。候補としてヒットした7,000報以上から重複報告や基準を満たさない論文を除外し、最終的に14報(15コホート)を選び、メタ解析を実施した。

 14報のうち8報は前向き観察コホート研究、5報は後ろ向きコホート研究、1報はランダム化比較試験(2つのコホート)だった。

 主要評価項目は抗凝固療法中止後、3カ月ごとのVTE再発率。さらに、累積VTE再発率も検討した。

中止後3カ月以内の再発率は14.6/100人・年

 対象は合計1,922例。抗凝固療法中止後0~3カ月、3~6カ月、6~12カ月、12~24カ月、24~36カ月、3~5年の100人・年当たりのVTE再発率はそれぞれ14.6(95%CI 6.5~22.8)、10.3(同6.9~13.6)、6.4(同3.1~9.4)、4.0(同1.1~7.0)、1.1(同0.3~2.1)、2.2(同0.0~4.4)だった。

 Egger検定とファンネルプロットによる視覚的評価で各期間のVTE再発率を検討したが、
出版バイアスの証拠は得られなかった。

 また、累積VTE再発率は、抗凝固療法中止後6カ月が23.4%(95%CI 12.9~33.3)、1年28.3%(同15.6~39.6)、2年31.1%(同16.5~43.8)、3年31.9%(同16.8~45.0)、5年35.0%(同16.8~47.4)だった。

再発の傾向は非がん患者と同様だがリスクは2倍

 考察でvan Hylckama Vlieg氏は「がん関連血栓症/VTEに対し3カ月以上の抗凝固療法を受けた1,922例のデータをメタ解析した結果、抗凝固療法中止後、約7例に1例が3カ月以内にVTEを再発し、5年以内では3分の1以上(35%)が再発することを確認した」とコメント。

 さらに「抗凝固療法中止後、最初の6カ月間の100人・年当たりのVTE再発率(0~3カ月14.6、3~6カ月10.3)は、がんでないVTE患者の再発率(100人・年当たり12.2、BMJ 2011; 342: d3036)の2倍である」と指摘。「今回の結果は、抗凝固療法中止後、最初の数カ月間のVTE再発率の高さを示しているが、これは非がん患者にも見られる傾向だ」と述べている。

 以上を踏まえ同氏らは「がん患者におけるVTE再発率の高さを考えると、活動性のがんを抱える患者には抗凝固療法を継続することが妥当であろう」と結論している。

木本 治