脳と膵臓(すいぞう)をつなぐ神経に刺激を加えるとインスリン分泌細胞が増えることを、東北大の研究グループがマウスを使った実験で発見した。てんかんや一部の腸炎などでは神経に電気刺激を与える治療法が既に確立されており、研究グループは糖尿病の根本的な治療法の開発につながる可能性があるとしている。研究成果は9日、国際科学誌ネイチャー・バイオメディカル・エンジニアリングに掲載された。
 血糖値を下げるインスリンは膵臓にあるベータ細胞でつくられる。研究グループは遺伝子改変により、脳と膵臓をつなぐ「迷走神経」に近赤外光を当てると活性化するマウスを作成。約2週間光を当て続けたマウスの膵臓を顕微鏡で観察したところ、光を当てなかったマウスと比べ、ベータ細胞の数が2倍以上に増えていた。また、糖尿病状態にしたマウスに約2カ月間同様の刺激を与えたところ、減少していたベータ細胞の数が回復し、血糖値も正常に戻った。
 研究グループの今井淳太・東北大大学院准教授(内分泌代謝学)は、「日本では欧米に比べてベータ細胞が減りやすく糖尿病になりやすい人が多い。10年以内を目指し治療法を開発していきたい」と話した。 (C)時事通信社