東京医科歯科大などの研究チームは8日、ヒトの胎盤の構造や機能に近いオルガノイド(ミニ臓器)を世界で初めて作製したと発表した。ウイルスが胎盤に感染する過程の解明や、安全な新薬の開発への応用が期待できるという。研究成果は、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版に発表された。
 胎盤は妊娠後に形成される器官で、胎児をウイルスなどの異物から守るバリアーの役割も持つ。ヒトの胎盤には謎が多いが、胎盤の構造は各動物で異なるため、動物実験での研究には限界がある。
 そこで研究チームは、ヒトの胎盤に近いミニ臓器作製を目指した。チームは、ヒトの胎盤からの樹立に成功している胎盤幹細胞に着目。胎盤の成長を促すたんぱく質を与えて約8日間培養し、大きさ約0.45ミリの球状のミニ臓器を作った。
 ミニ臓器を詳しく調べたところ、異物へのバリアーとして働く細胞を表面に持つ絨毛(じゅうもう)の構造が同じだった。さらに、有害物質を通さない性能もヒトの胎盤と同じ傾向を示した。
 研究チームは「胎児への副作用を抑えた新薬開発が期待できる。ミニ臓器をどういう形で使ってもらえるか検討していきたい」としている。 (C)時事通信社