サウジアラビア・King Faisal UniversityのAbdullah Almuqahwi氏らは、成人男女における身体活動と性機能との関連をランダム化比較試験(RCT)12件のシステマチックレビューで検証。その結果、男性ではウォーキングなどの有酸素運動が勃起機能を改善することが示されたが、女性ではデータが少なく身体活動と性機能との関連が明確でなかったとCureus2024; 15: e51307)に発表した

ウォーキング30日で勃起不全が71%減少

 Almuqahwi氏らは、MEDLINEおよびSCOPUS(2023年6月時点)、Google ScholarおよびWeb of Science(2023年8月時点)を検索。英語またはアラビア語で発表され、追跡期間が3週間以上で、国際勃起機能(IIEF)の5項目の質問票(IIEF-5)または女性性機能指数(FSFI)を用いて性機能に対する身体活動の影響を検討したRCT 12件を抽出しシステマチックレビューに組み入れた。

 このうち、10件が男性の勃起機能と身体活動との関連を検討したもので、追跡期間は8週間から2年までの幅があった。身体活動の内容も多岐にわたり、自宅でのウォーキング、その他の有酸素運動、インターバル持久力トレーニングなどが検討されていた。

 全般的にIIEF-5スコアで評価した勃起機能の有意な改善が見られたが、改善度は研究間のばらつきが大きかった。例えば、自宅でウォーキング(中等度の強度の有酸素運動)を行った男性群では、介入開始から30日後に標準治療群と比べて勃起不全が71%有意に減少していた(Am J Cardiol 2015; 115: 571-575)。

前立腺全摘後の勃起不全は標準治療と有意差なし

 一方、根治的前立腺全摘除術を受けた男性50例を12カ月追跡して術後の勃起不全の有病率を検討したRCTでは、標準治療群と有酸素運動群で有意差が認められなかった(Eur Urol 2014; 65: 852-855)。

 女性を対象にしたRCTは2件のみで、身体活動と性機能との関連について明確な結論を導くことはできなかった。例えば、米国の40~62歳の女性をヨガ群、心血管コンディショニングを行う身体活動群、通常活動群にランダムに割り付けて12週間追跡したRCTでは、ヨガ群と通常活動群のFSFIスコアに有意差がなかった(P=0.58、Am J Obstet Gynecol 2014; 210: 244.e1)。なお、このRCTでは身体活動群と通常活動群の比較は行われていなかった。

 以上の結果から、Almuqahwi氏らは「有酸素運動は男性の勃起機能の改善に有効な非薬物的介入であることが示された。今回の結果は、勃起機能の改善を目的とする身体活動を中心とした介入についての、エビデンスに基づくガイドラインを作成する必要性を強調するものだ」と結論している。

 一方、女性における性機能の改善に寄与する身体活動については、「データが不足しており、運動の種類、期間、強度などをさらに究明する必要がある」と指摘。加えて、「性機能に影響を及ぼすメカニズムについても検討すべきである」としている。

太田敦子