過度な飲酒は多くの疾患および死亡のリスク上昇に関連するとの報告がある。飲酒量低減は公衆衛生上の課題となっているが、効果的なアプローチ法は確立されていない。筑波大学医学医療系准教授の吉本尚氏らは、自身らが行ったノンアルコール飲料の無償提供による飲酒量減少効果を示したランダム化比較試験(RCT)の二次解析を実施。飲酒頻度および1回当たりの飲酒量と性との関連を検討した結果、飲酒量減少プロセスには性差が認められたとBMC Public Health2024; 24: 150)に発表した。(関連記事「ノンアル増えるとアルコールは買わない⁉」)

ノンアルコール飲料を月1回、最大3ケース提供

 過度の飲酒は本人の健康問題だけでなく、飲酒運転による交通事故や家庭内暴力など他の深刻な問題にもつながるため、世界的な公衆衛生上の課題となっている。吉本氏らは昨年(2023年)、ノンアルコール飲料の無償提供が飲酒量を減らすための介入として有効であるとのRCTの結果を報告している(BMC Public Health 2023; 21: 379)。減酒介入の効果には個人差や性差が報告されているが、同試験では飲酒量の平均変化率に性差は認められなかった。そこで同氏らは今回、飲酒頻度および1回当たりの飲酒量に着目し、性との関連を検討する二次解析を行った。

 同試験の対象は、20歳以上で①週に4日以上飲酒し、②1回当たりの飲酒量が男性は純アルコール換算40g以上、女性は同20g以上、③ノンアルコール飲料の摂取が月1回以下-の123人(女性69人、男性54人)。アルコール依存症例や肝疾患既往例、妊婦などは除外した。12週の介入期間中にノンアルコール飲料を4週ごとに1回最大3ケース提供する介入群(54人)と、期間中は提供せず終了後に謝礼として最大5ケース提供する対照群(69人)にランダムに割り付け、介入開始2週前から介入終了後8週までのアルコールおよびノンアルコール飲料摂取量を毎日記録して4週ごとに提出してもらった。

 主解析では、男女ともに介入群で全ての期間において飲酒量が有意に減少した(P<0.001)。二次解析では、両群の飲酒頻度(4週当たりの飲酒回数)、1回当たりの飲酒量について男女間で比較した。

男性は飲酒量減、女性は飲酒回数減

 解析対象は、男性が53人(介入群26人、対照群27人)、女性が68人(同28人、40人)だった。解析の結果、飲酒頻度は男性では介入4週後には介入群で有意に減少したが、以降は有意差が消失した。女性では介入期間の12週を通じて介入群で有意に減少し、16週後まで有意差が維持された(図1)。

図1.飲酒頻度の変化

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 一方、1日当たりの飲酒量は男性では介入12週後に介入群で有意に低値だったが、女性では一貫して群間差が認められなかった(図2)。

図2.1日当たりの飲酒量の変化

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(図1、2ともに筑波大学プレスリリースより)

 以上の結果を踏まえ、吉本氏は「ノンアルコール飲料の無償提供による減酒効果は男女ともに認められたものの、飲酒量減少のプロセスに性差が示された。男性では飲酒頻度の顕著な減少は認められなかったが1回当たりの飲酒量が減少し、⼥性では1回当たりの飲酒量は減らなかったが飲酒頻度は減少した。過度な飲酒による健康リスクを低減するには、性差を考慮した対策を進める必要がある」と結論している。

服部美咲