米・Medical College of Georgia, Augusta UniversityのSatish S. Rao氏らは、作用機序が異なる3種類の慢性便秘症治療薬(上皮機能変容薬ルビプロストン、グアニル酸シクラーゼC受容体作動薬リナクロチド、胆汁酸トランスポーター阻害薬エロビキシバット)の有効性と安全性をランダム化比較試験(RCT)14件のシステマチックレビューおよびメタ解析で検討。その結果、有効性は3剤とも同等でプラセボと比べて自発的排便(SBM)を有意に改善した一方、安全性プロファイルは異なっていたとBMC Gastroenterol2024; 24: 12)に発表した。

SBMは投与1週間で有意に改善

 Rao氏らは、PubMedおよびEMBASEに2020年9月8日までに収載された論文を検索。成人の慢性便秘症患者を対象にルビプロストン、リナクロチドまたはエロビキシバットの有効性および安全性をプラセボと比較したRCT 14件を抽出しメタ解析を行った。有効性の主要評価項目は、投与開始後1週時点における1週間当たりのSBM回数のベースラインからの変化量とした。

 解析の結果、3剤ともプラセボと比べて有意な改善が認められた。主要評価項目のプラセボとの平均差は、ルビプロストン24μg 1日2回投与(2件)で3.64回(95%CI 0.83~6.46回、P=0.0111)、リナクロチド500μg(2件)で2.24回(同1.65~2.83回)、同薬145μg(1件)で2.40回(同1.53~3.27回)、エロビキシバット10mg(3件)で3.40回(同1.89~4.91回)、同薬15mg(2件)で3.38回(同2.36~4.41回)だった(全てP<0.0001)。ただし、ルビプロストン(P=0.02、I2=82%)、エロビキシバット10mg(P=0.03、I2=70%)に関しては研究間の異質性が高かった。

 治療必要数(NNT)は、ルビプロストン24μg 1日2回投与で3(奏効の定義:1週時点の1週間当たりのSBMが4回以上)および5(同3回以上)、リナクロチド500μgで5、エロビキシバット10mgで3(同3回以上かつベースラインから1回以上増加)と算出された。

悪心、下痢、腹痛のリスクに3剤間で差

 一方、安全性プロファイルは3剤で異なっていた。有害必要数(NNH)が最も大きかったのは、悪心ではエロビキシバット15mg(NNH 96、95%CI -26~17)、下痢ではルビプロストン(同14、10~23)、腹痛ではリナクロチド145μg(同70、-171~29)だった。

 逆にNNHが最も小さくリスクが高かったのは、悪心ではルビプロストン(NNH 5、95%CI 4~6)、下痢ではリナクロチド145mg(同8、7~11)、腹痛ではエロビキシバット15mg(同5、4~8)だった。

 以上の結果について、Rao氏らは「臨床診療における慢性便秘症の個別化治療に有用な可能性がある」と結論。「悪心のリスクが高いルビプロストンは、空腹時の服用を避けるよう指導する必要がある。リナクロチドは、他の薬剤の服用で下痢を発現したことがある患者には慎重に処方すべきである。エロビキシバットは、腹痛や腹部不快感などの症状を有する患者においては治療選択肢にならないだろう」と述べている。

太田敦子