台湾・Chi Mei Medical Center/Kaohsiung Chang Gung Memorial HospitalのTing-Yi Chiang氏らは、アレルギー性疾患と性機能障害との関連を観察研究12件のスコーピングレビューで網羅的に検討。その結果、健康な対照群と比べて各種のアレルギー性疾患を持つ患者群では男女ともに性機能に関するスコアが有意に低く、性機能障害リスクが高いことが示唆されたとInt Arch Allergy Immunol2023年9月20日オンライン版)に発表した。

喘息、鼻炎、蕁麻疹の患者で性機能スコア低下

 Chiang氏らは、システマチックレビューに関するPRISMAガイドラインの拡張版であるPRISMA Extension for Scoping Reviews(PRISMA-ScR)に従い、医学データベースPubMed、MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、Web of Scienceに2023年1月15日までに掲載された英語の論文を網羅的に検索。女性性機能指数(FSFI)または国際勃起機能指数(IIEF)のスコアを用い、アレルギー性疾患の患者群と健康な対照群における性機能障害を比較検討した観察研究12件を解析に組み入れた。

 解析の結果、対照群と比べて喘息(6件)、アレルギー性鼻炎(4件)、蕁麻疹(2件)の患者群でFSFIスコアまたはIIEFスコアが有意に低かった。

各種薬物療法で性機能も改善

 喘息との関連を検討した6件のうち、5件でFSFIまたはIIEFの合計スコアが、1件でFSFIサブスケールスコアが対照群で有意に高かった。また、喘息のコントロール状況を評価した2件の研究では、コントロール不良群と比べて良好群でこれらの性機能スコアが高かった。

 アレルギー性鼻炎の治療が性機能に及ぼす影響を検討した3件の研究では、ステロイド点鼻薬および抗ヒスタミン薬による治療後にFSFIまたはIIEFスコアが有意に改善しており、性機能とアレルギー性鼻炎の重症度との逆相関が示唆された。

 蕁麻疹との関連を検討した2件のうち、1件では蕁麻疹の活動性とFSFIスコアとの間に負の相関が認められ、もう1件ではオマリズマブおよび抗ヒスタミン薬により蕁麻疹の症状と性機能が同時に改善していた。

 以上の結果から、Chiang氏らは「アレルギー性疾患と性機能障害との相関が認められた。この相関には、炎症、心理学的因子、ホルモンの変化、睡眠障害、性行動に関連するアレルギー反応、社会経済的状況、各種治療薬の使用などが関与している可能性がある」と結論。また、アレルギー性疾患の治療が性機能の改善に関連する可能性も示唆されたことから、「今後の研究で両者を関連付けるメカニズムを解明し、アレルギー性疾患の各種治療法による性機能の改善効果を比較検討する必要がある」と付言している。

太田敦子