顎骨骨折〔がくこつこっせつ〕
上あごより下あごに多く、女性より男性に多くみられます。交通事故などの外傷に起因するものだけでなく、顎骨の大きな嚢胞(のうほう)や腫瘍の存在、さらに放射線治療の影響などによっても骨折を起こすことがあります(病的骨折)。
[症状]
骨折部位の周囲には、はれや痛みが出ます。かみしめたり、口をあけようとすると骨の折れた部分が動いて激しく痛みます。骨の連続が完全に離断された場合(完全骨折)には、骨折部位により異なったかみ合わせの異常が出現します。
[治療]
事故などの外傷による場合は、意識消失、呼吸困難など起こしていることもあり、これらに対する救急処置をおこない、ついで、脳や目といった隣接した重要な場所の確認および応急処置をおこないます。
あごや口の傷に対しては、まず皮膚や粘膜の傷に対しての処置を、次に歯の応急処置をおこないます。その後は、炎症や感染の予防、食事の管理をおこないながら、骨折部位やもとのかみ合わせについての精査を進めます。
骨折の整復(骨をもとの状態に戻すこと)および固定は緊急を要するものではありません。ある程度はれがひくのをまってから(受傷後1週間程度、おそくても2週間以内)、必要があれば手術をします。骨折の部位やずれの程度にもよりますが、はれがひくとともにもとのかみ合わせに戻ってきて、手術をおこなわずにすむことも多いです。
整復は上あごと下あごの歯に歯列矯正(きょうせい)のときに装着するような金属やプラスチックの鉤(かぎ:ひっかかり)をつけて、それに輪ゴムをひっかけて引き合うことで、もとのかみ合わせに戻します。ずれがいちじるしい場合や歯周病やう蝕がいちじるしい場合、あるいは歯が欠損している場合には手術をして骨の位置を整復します。
骨の位置がもとに戻ったら骨の固定をおこないます。折れた部位をはさんで連続した針金を歯に固定する方法(顎内固定)、上下のあごを針金でしばり動かなくする方法(顎間固定)、手術をして直接、骨に小さな金属板をネジどめして固定する方法(観血的固定)などがあり、部位や程度によってこれらの固定を単独、もしくは組み合わせておこないます。
顎関節付近の骨折では、手術をおこなわず開口訓練などを適切におこなうことで十分な機能の回復を得ることができるため、整復の困難さや手術による後遺症を避ける意味を含めて手術を選択しない場合もあります。
顎骨骨折の第一目標は、もとのかみ合わせに戻すことにあります。かみ合わせは非常に微妙なバランスのうえに成り立っているものであり、手術のみを考えるのではなく、人間のもつ回復力を十分に考慮に入れた治療が重要です。また、治療にはかみ合わせについての十分な配慮が必要となりますので、口腔(こうくう)外科や形成外科を受診することをおすすめします。
骨折を起こしてから1カ月以上経過して、かみ合わせの異常や骨の癒合(ゆごう)に異常が残ってしまったような場合には、手術でもう一度骨を切り離し骨の位置を直して接合させます。同時に骨の移植を要する場合もあります。
[症状]
骨折部位の周囲には、はれや痛みが出ます。かみしめたり、口をあけようとすると骨の折れた部分が動いて激しく痛みます。骨の連続が完全に離断された場合(完全骨折)には、骨折部位により異なったかみ合わせの異常が出現します。
[治療]
事故などの外傷による場合は、意識消失、呼吸困難など起こしていることもあり、これらに対する救急処置をおこない、ついで、脳や目といった隣接した重要な場所の確認および応急処置をおこないます。
あごや口の傷に対しては、まず皮膚や粘膜の傷に対しての処置を、次に歯の応急処置をおこないます。その後は、炎症や感染の予防、食事の管理をおこないながら、骨折部位やもとのかみ合わせについての精査を進めます。
骨折の整復(骨をもとの状態に戻すこと)および固定は緊急を要するものではありません。ある程度はれがひくのをまってから(受傷後1週間程度、おそくても2週間以内)、必要があれば手術をします。骨折の部位やずれの程度にもよりますが、はれがひくとともにもとのかみ合わせに戻ってきて、手術をおこなわずにすむことも多いです。
整復は上あごと下あごの歯に歯列矯正(きょうせい)のときに装着するような金属やプラスチックの鉤(かぎ:ひっかかり)をつけて、それに輪ゴムをひっかけて引き合うことで、もとのかみ合わせに戻します。ずれがいちじるしい場合や歯周病やう蝕がいちじるしい場合、あるいは歯が欠損している場合には手術をして骨の位置を整復します。
骨の位置がもとに戻ったら骨の固定をおこないます。折れた部位をはさんで連続した針金を歯に固定する方法(顎内固定)、上下のあごを針金でしばり動かなくする方法(顎間固定)、手術をして直接、骨に小さな金属板をネジどめして固定する方法(観血的固定)などがあり、部位や程度によってこれらの固定を単独、もしくは組み合わせておこないます。
顎関節付近の骨折では、手術をおこなわず開口訓練などを適切におこなうことで十分な機能の回復を得ることができるため、整復の困難さや手術による後遺症を避ける意味を含めて手術を選択しない場合もあります。
顎骨骨折の第一目標は、もとのかみ合わせに戻すことにあります。かみ合わせは非常に微妙なバランスのうえに成り立っているものであり、手術のみを考えるのではなく、人間のもつ回復力を十分に考慮に入れた治療が重要です。また、治療にはかみ合わせについての十分な配慮が必要となりますので、口腔(こうくう)外科や形成外科を受診することをおすすめします。
骨折を起こしてから1カ月以上経過して、かみ合わせの異常や骨の癒合(ゆごう)に異常が残ってしまったような場合には、手術でもう一度骨を切り離し骨の位置を直して接合させます。同時に骨の移植を要する場合もあります。
(執筆・監修:東京大学 名誉教授/JR東京総合病院 名誉院長 髙戸 毅)