口蓋裂〔こうがいれつ〕

 口蓋とは、いわゆる「上あご」のことで、前方は骨のある硬い「硬口蓋」、後方は動きのある「軟口蓋」になっています。軟口蓋の最後方部分が「口蓋垂(すい)」(のどちんこといわれている部分)です。口蓋裂とは、軟口蓋においては中央が、硬口蓋においては右、左、両側、あるいは中央に裂け目ができる先天性の疾患です。

[原因]
 唇裂(しんれつ)と同様で、特定されているものはありません。

[症状]
 口蓋裂があることにより口の中と鼻の中がつながり、食べた物の鼻への流入や、しゃべるときに空気が鼻へ漏れるといった症状が出ます。哺乳(ほにゅう)はそのままで可能なこともありますが、うまく飲めないこともあります。
 空気が鼻へ漏れること、また、そのためにしゃべるときにある種の「癖」がついてしまうことなどにより、話すことばが相手に聞き取りにくくなることを構音障害といいます。軟口蓋は嚥下(えんげ)や構音の際に動くところで、この動きは軟口蓋にある筋肉によるものです。口蓋裂のある人では、この筋肉も左右に分かれていて効果的なはたらきができなくなっているために構音障害が起こります。
 口蓋裂の特殊型として粘膜下口蓋裂があります。これは、一見口蓋には裂け目がないようにみえるのですが、粘膜の中でこの筋肉がわれているもので、やはり軟口蓋の効果的な動きが障害され、構音障害がみられます。
 粘膜下口蓋裂では口蓋垂が2つに分かれているのが特徴的です。
 なお、口蓋垂だけが分かれているものを口蓋垂裂といいます。口蓋垂裂だけの場合には機能障害は起こらず、特に治療の必要はありません。
 口蓋裂があると滲出(しんしゅつ)性中耳炎を起こすといわれています。これは中耳(鼓膜〈こまく〉の内側の部分)に水がたまってしまうタイプのものです。長期間放置すると聴力が低下するので、定期的な診察が必要です。
 口蓋裂により「上あご」の発育がわるい場合や、顎裂(がくれつ)があるときには、歯並びやかみ合わせがわるくなることがあります。特に顎裂があると、前歯の本数が足りなかったり、歯のかたちが小さかったりすることがありますので、専門的な診察が必要です。


[治療]
 哺乳が困難であれば、口蓋裂用の乳首や口蓋床を使います。唇裂
 治療の時期や方法はいくつかに分けられています。口蓋を閉鎖するための口蓋形成術については、乳児期に口蓋閉鎖手術をおこなう、幼児期になってから手術をおこなう、2回に分けて軟口蓋と硬口蓋を別々に閉鎖する、などです。
 また手術方法も、粘膜弁法、粘膜骨膜弁法などいくつかあります。口蓋裂は人によって裂け目の広さや裂け目のある部分(粘膜下口蓋裂、軟口蓋裂、唇顎口蓋裂など)が異なり、そのほかに合併する異常なども考慮して治療計画を立てる必要があります。手術は全身麻酔下におこないます。口蓋形成術の目標は、口と鼻の瘻孔(ろうこう)を閉鎖し、しゃべるときに必要以上に空気が鼻へ漏れないような状態にすることです。
 手術的に閉じる方法のほかに、硬口蓋では口蓋床などを使ってふさぐ方法がありますが、軟口蓋は口蓋床で動きを獲得することができないため効果的な治療はできません。手術的な方法では上顎、特に硬口蓋の発育に影響があるとされているため、あまり早期には手術をおこなわないという意見もあります。一般的には、ことばをたくさんしゃべるようになる前、1歳3カ月から2歳くらいをめどに治療をおこなう施設が多いようです。口蓋裂が軟口蓋だけの場合や、粘膜下口蓋裂の場合には軟口蓋だけの手術になります。
 構音についての治療効果はしゃべるようになってから、通常は3~4歳くらいから評価するようになり、その後は専門的な評価や治療が必要になります。時に軟口蓋の筋肉の発達がわるかったり、軟口蓋自体が咽頭(いんとう)腔の広さに対して短い場合には、咽頭腔と鼻腔を閉鎖する機能(鼻咽腔閉鎖機能)が十分に獲得できないこともあります。この場合には、後日再手術や咽頭弁形成術をおこなうことがあります。
 硬口蓋の前方には歯槽(しそう)という、将来歯の生えるところがあります。歯の生え具合や永久歯の数などを評価しながら治療方針を決めます。歯並びの矯正(きょうせい)治療は、歯の生えかたにあわせて計画していきます。
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