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認知症は、物忘れや判断力の低下などの中核症状に加えて、頻度は高くないが、幻覚や妄想、徘徊(はいかい)、暴言、暴力などの行動・心理症状(BPSD)が出現することがある。東京慈恵会医科大学(東京都港区)精神医学講座の繁田雅弘教授は、「家族や介護者の大きな負担になる徘徊、暴言、暴力といった行動の障害には、環境や人間関係が特に大きく影響します。患者の話をよく聴き、共感することで症状が表れなくなったり、軽くなったりします」と指摘する。
認知症の行動・心理症状(BPSD)
▽改善可能なBPSD
認知症のBPSDは周辺症状とも呼ばれ、中核症状が原因となった行動や心理面の症状として表れる。具体的には〔1〕幻覚、錯覚〔2〕思考の障害(妄想、疑心、嫉妬)〔3〕感情の障害(抑うつ、不安)〔4〕行動の障害(徘徊、暴言、暴力)〔5〕衝動性の高進(異性に触れたり、万引きしたりする)〔6〕意欲や自発性の低下(無関心、無気力)―などがある。
認知症の中核症状は脳の障害が直接の原因であるため改善は難しいが、BPSDは安心できる環境の中で信頼できる人がそばについているなど適切な対応を取ることで良くなることがある。
比較的軽度であれば、体を軽く動かす運動療法、音楽療法、懐かしい写真や物を眺めて昔のことを語り合う回想法などが効果を期待できる。これらで改善しない場合、抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬などをやむを得ず用いた薬物療法が行われることもある。
▽改善は周囲の理解から
BPSDの症状で、特に患者の生活の質(QOL)を低下させ、介護者のストレスを増大させるのは、徘徊、暴言、暴力といった行動障害だ。繁田教授は、環境や人間関係が大きく影響するため、他のBPSDとは区別する必要があるとする。「何よりも大切なのは、本人が安心できるように、周囲の環境や人間関係を調整することです」
暴言を吐いたり、暴力を振るう患者に接する際には、非難したり、無視したりしてはならない。また、徘徊を起こす人は、何らかの目的があって外出するが、時間と場所の感覚を失い、道に迷うケースが多い。外出を禁ずるのではなく、理由を聞き、失敗を責めずに、共感を示すこと、同行し、あるいは見守ることが改善の近道となる。
繁田教授は「今までできていたことができない自分に、患者本人が一番傷つき、不安で混乱しています。患者の声に耳を傾け、安心できる生活の場を作ってあげることでBPSDは改善します」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/03/30 07:00)
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