運動療法 家庭の医学

 運動療法も食事療法とならぶ基本的な治療です。運動療法の効果もインスリンの節約、インスリン抵抗性の改善がポイントであり、2型糖尿病の多くは食事療法と運動療法を適切に実践すれば、血糖管理はかなり改善されます。
 しかし、ふだんより強度の高い運動をおこなうときはメディカル・チェックが必要です。そのほか、運動療法を控えたほうがよい場合がありますので、下記をご覧ください。

■運動療法の効用
 過剰なエネルギー摂取やエネルギーの蓄積(肥満)を食事療法で制限するとともに、運動療法で消費することができれば肥満の是正、インスリン抵抗性の改善はいちじるしいものとなります。
 運動療法の効用としては、そのほか脂質代謝の改善、筋肉や体力の増強、心肺機能の改善・強化、ストレスの解消などが期待できます。

■運動療法を控える場合
 食事療法がすべての糖尿病のある人に有効な治療であるのに対し、運動療法は必ずしもそうではありません。たとえば、高血糖がいちじるしい場合には、運動によってかえって血糖値が高くなることがあります。インスリンの分泌や作用の低下がいちじるしい場合には、糖質の利用でなく、脂肪がエネルギー源として使われるため、血糖値が下がりにくく、かえって上昇することもあります。
 そのほか、進行した糖尿病網膜症糖尿病腎症などの慢性合併症をもつ人が運動療法をおこなうと、眼底出血が起こったり、腎症が悪化する場合があります。足や腰に障害がある人も激しい運動によって悪化する危険があります。さらに、狭心症心筋梗塞など虚血性心疾患を合併する人や高度の糖尿病性自律神経障害を合併した人も運動が禁忌となる場合があり、運動療法前のメディカル・チェックが大切です。

■糖尿病に適した運動療法
 糖尿病の治療に適した運動は、無理なく長期間続けられるもの、相手や道具などを必要とせず1人で手軽にできるもの、運動の強度を調節できるものがよく、具体的には、歩行、ジョギング、体操、自転車、水泳、ジャズダンスなどがすすめられます。1回に30分間くらいをめやすに、食後血糖値が上昇する1~2時間後におこなうのが効果的です。運動の効果はあまり持続しないので、1週間に3日はおこないたいところです。
 薬物療法をおこなっている場合には、運動による低血糖の出現に注意する必要があり、キャンディ、砂糖、ビスケット、ジュースなどを携帯しておくことが大切です。

(執筆・監修:東京女子医科大学附属足立医療センター 病院長/東京女子医科大学 特任教授 内潟 安子)
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