治療・予防

進行した頭頸部がんに光明
期待される免疫療法薬

 口や鼻、顎、喉、耳などを頭頸部といい、ここに発生するがんは「頭頸部がん」と総称される。大半が進行した状態で見つかるため、手術できないことも多く、手術以外の治療法に頼らざるを得ない。最近、抗がん剤を上回る治療効果を示す免疫チェックポイント阻害薬が使えるようになり、大きな期待が寄せられている。

頭頸部がんの主な発症原因

 ▽直近10年で患者数増加

 頭頸部がんの最大の原因は喫煙と多量飲酒。そのためか、男性の患者が圧倒的に多い。そのほか、ヒトパピローマウイルスが発症に関わることも分かってきた。国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)頭頸部内科の田原信科長によると、人口の高齢化に伴い、直近の10年間で男性の頭頸部がんは著しく増えている。

 頭頸部がんの約6割は、受診時に既にリンパ節や他臓器に転移している進行がんだ。手術が可能な場合でも、切除により容貌が変化したり、食事や会話ができなくなったりすることがあり、手術を諦める人は少なくない。術後、高率で再発するリスクもある。そのため放射線療法や薬物療法が治療の中心となるが、十分な治療効果が得られないことも多い。

 ▽1年生存率が倍以上に

 そうした中、皮膚がん肺がんなどの治療に用いられ、開発者である本庶佑氏のノーベル生理学・医学賞の受賞で話題になった免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブ(商品名・オプジーボ)が、2017年3月から頭頸部がんにも使用できるようになった。

 体の中で免疫機能が正常に働いている状態では、T細胞などの免疫細胞ががん細胞を攻撃する。だが、がん細胞が免疫細胞の攻撃にブレーキをかけて、増殖することが分かってきた。ニボルマブは、そのブレーキを解除し、がん細胞をたたく薬だ。

 田原科長によると、日本を含む国際的な臨床試験で、ニボルマブの投与を受けた人の1年生存率は36%。従来の抗がん剤などの投与を受けた人の16.6%に比べて2倍以上高かった。日常生活への影響はほとんどなかった。2年生存率でも明らかな差が出た。

 「ニボルマブは、抗がん剤が効かない進行した頭頸部がんの標準的治療薬となりました。効かない人もいますが、効く人では長期間生存することが十分期待できます。中にはがんが消えてしまった人もいます」と田原科長。ただし、免疫系の副作用が起こる可能性があるため、「体調がいつもと違うと感じたら、すぐに病院に連絡してほしい」と注意を喚起する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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