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外科医としてたくさんの手術に関わると、相反する二つの感情を抱きます。一つは、「人の体とはこうもよく似ているものか」というもの。もう一つは、「人の体とはこうも多様なものか」というものです。矛盾しているようですが、実はこれが正直な感覚です。
まず前者は、見た目も背丈も性格も生い立ちも、何もかもが違う人たちであるのに、おなかを開くと誰もがほぼ同じ構造や機能を持っている、という意味です。
外科医向け研修としてモニター公開された手術の模様=2018年11月08日、仏ストラスブール【AFP=時事】(イメージ、本文とは関係ありません)
◇類似性と多様性
右上に肝臓があり、真ん中に胃と十二指腸と膵臓(すいぞう)があり、左上に脾臓(ひぞう)があり、下に長い大腸と小腸が横たわる。当たり前のようですが、何百、何千という全く異なる人たちのおなかを開けると同じ景色が広がっている、というのは、ある意味で神秘的です。
では、後者の「多様」とはどういう意味でしょうか。
確かに構造や機能は誰しも同じなのですが、血管の走行、太さやもろさ、脂肪組織の色調や量、腸管の走行や長さなど、細かな部分は微妙に異なり、一人として同じ人はいません。
実際私たちは、記録された手術中の画像を見るだけで、それがどの患者さんの体内であるかを思い出せることもよくあります。そのくらい、細かな部分に差異があるからです。
人が生きていくためには、大まかな構造や機能は同じでなければならない一方、生体機能に大きな影響を及ぼさない細かな部分には「遊び」がある。これもまた神秘的です。
むろん今回は「人体の神秘」について語りたいわけではありません。重要なのは、この「多様性」が手術の難度やリスクを決める因子になる、という点が、手術を受ける上で重要だということです。
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