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職場で上司の指示を何度も聞き間違う、テレビの音も字幕がないと分からない、耳が悪いのかと思って耳鼻科を受診しても聴力には問題がない―。このように、聞こえは正常なのに内容が聞き取れないという症状は、聴覚情報処理障害(APD)の特徴だ。ミルディス小児科耳鼻科(東京都足立区)の平野浩二院長は「APDは認知度が低く、なかなか理解されない病気です。自分がAPDだと知らずに生活している人も多いはずです」と話す。
職場や学校での生活に支障を来す
▽仕事や学業に影響
音は聞こえるが聞き取りづらい、理解ができないというAPDの症状は、日常生活のあらゆる場面で不便をもたらす。ざわついた場所だと聞き取りづらくなるほか、電話の声や、早口で話されると分からないといった訴えが多い。平野院長は「社会に出た後に気付く人が多く、職場では『話をきちんと聞いていない』『集中力がない』などと言われることもしばしばです。学校では先生の話が聞き取れないため、学力に影響することもあります」と指摘する。聞こえが悪いのではないかと耳鼻科を受診するが、聴力に異常はなく、医療機関を転々とするケースも少なくないという。
APDの原因ははっきりとは分かっていない。脳内の言葉を認識する部分に問題があるともいわれ、交通事故などで脳に障害を負ってからAPDになったケースもある。発達障害とも密接な関係があり、「成人のAPDの74%に発達障害があったという報告もあります」と平野院長は説明する。
▽環境整え補聴器利用も
APDは、問診に加えて音を聞き取る聴力検査や、50音を発声して何と言ったかを書き出すスピーチ検査などを実施し、総合的に診断する。
有効な治療法はないため、APDと診断されたら生活や職場の環境を整えることが必要だ。「騒音下での会話は避け、静かな場所で話をする。学校なら先生の声が聞き取りやすいよう、一番前の席にしてもらうなどの対処が必要です」と平野院長。補助手段として、周囲の騒音を消す機能を持つイヤホンやヘッドホンなどの使用も考慮する。職業については「騒音下で話を聞く職業や、救急医療現場のように口頭で緊急のやりとりを行うような仕事は避けた方がいいでしょう」と助言する。
APDを診断できる医療機関は少ない。受診の際は、聴覚を専門とする耳鼻咽喉科医がいる医療機関を受診するとよい。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/08/18 08:00)
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