補聴器〔ほちょうき〕 家庭の医学

 補聴器は難聴の耳の聞こえを補うための道具ですが、正しい選択が必要です。
 まず耳鼻咽喉科医(できれば補聴器相談医)の診察を受け、聴力検査をおこなって、どのような難聴か(感音難聴か、伝音難聴か)診断します。さらに、語音聴取検査(音の大きさを変えて、どの程度ことばが聞き取れるかの検査)や不快閾値(大きすぎて不快に感じる音の大きさ)検査をおこないます。
 これらのデータをもとに認定補聴器専門店に紹介され、そこで補聴器を選び、調整します。補聴器は音を増幅してよく聞こえるようにするものですが、どの周波数でも同じ程度の難聴ではないため、周波数ごとに音の増幅を調整します。また、内耳の障害では小さな音は聞こえないのに大きな音は割れて聞こえたりするため、増幅の程度も調整します。そのほか、騒音環境では聞きとりが悪化するため、周囲の雑音を下げたり、一定の方向からくる音を効率的にとらえるなどの工夫もなされます。このような調整のあと、実際に使用し、会話や音楽や社会音などを聞き、特に音声がよく聞こえるように、本人が満足あるいは妥協できるまで調整をくり返します。
 補聴器のかたちは耳にかけて使うタイプを耳掛け型、外耳道の中に入れて外から見えないタイプを耳穴型、イヤホンを耳の中に入れコードでたばこぐらいのサイズの本体とつながっているタイプを箱型と呼んでいます。
 補聴器は小さな電子化された装置のため、注意深い扱いが必要です。

(執筆・監修:東京逓信病院 病院長 山岨 達也
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