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多発性硬化症(MS)は中枢神経系の難病であり、好発年齢は20~40代で、女性に多い。若い女性が発症しやすい病気であることから、妊娠や出産への影響について、東京女子医科大学病院(東京都新宿区)脳神経内科の清水優子特命担当教授に聞いた。
▽再発と寛解を繰り返す難病
MSは、脳や脊髄、視神経などの中枢神経で炎症が起こり、視力障害、運動・感覚障害、排尿障害、歩行障害といったさまざまな症状が表れる。患者の大半は、症状が出現する「再発」と、症状が治まる「寛解」を繰り返す。現時点で根治療法はなく、国の指定難病の一つである。清水教授によると、国内の推定患者数は約1万5000人とされる。
「近年、患者数が右肩上がりで増えています。原因として、食生活の欧米化、ストレス、喫煙、病原菌などから体を守る腸内フローラの変化、日照時間やビタミンDの不足などの影響があると言われています」と清水教授は指摘する。
MSは、再発と寛解を繰り返す「再発・寛解型」が多いが、体の機能障害が進行していく「二次進行型」に徐々に移行していく。歩行が困難になるなど身体機能が低下するため、早期に治療を開始して再発を抑え、進行を遅らせることが重要となる。
▽出産経験で進行リスク低下
出産適齢期の女性に好発する病気のため、妊娠や出産、生まれてくる子供への影響を心配する声もある。この点について、清水教授は「妊娠や出産に悪影響はないと言われています。妊娠中は、炎症を引き起こすサイトカインと、炎症を阻害するサイトカインのバランスが取れることで、特に妊娠後期に再発率が低下することが分かっています。また胎児への影響については、健康な母親から生まれた子どもと差はないと言われています」と話す。
ただし、妊娠前にMSの症状が安定していないと出産後の再発リスクが高くなるため、妊娠を望む場合は、まず症状を落ち着かせることが大切だ。また、産後3カ月間は、育児によるストレスの増加や免疫機能の変化などにより、再発しやすくなる。清水教授は「出産後の再発を予防するためには、妊娠前にしっかり治療して再発させないこと、そして出産後は家族の協力を得るなどして、できるだけ育児による疲労やストレス、負担を減らすことが大切です」とアドバイスする。
一方、不妊治療がMSに及ぼす影響に関しては、「MSを悪化させるという報告がありますが、再発せずに症状が安定した状態であれば、不妊治療も可能です」と清水教授。また、出産経験のある患者は、出産経験のない患者に比べて、進行リスクが低下するという報告があるとして、「出産経験者では長期の経過が良好となる可能性もあります」と期待を示す。(メディカルトリビューン=時事)
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