多発性硬化症〔たはつせいこうかしょう〕

 多発性硬化症の有病率は10万人に3人ほどで、20~40歳の女性に多いのですが、男女ともに起こります。脳や脊髄のいろいろな場所に障害を起こすやっかいな病気です。病気の原因は神経線維をカバーする髄鞘(ずいしょう)を攻撃する抗体がからだにつくられるためと考えられています。それも手足の末梢神経ではなく、脳や脊髄などの中枢神経にある神経線維のカバーが攻撃されます。
 多発性硬化症は、大脳、脊髄のあらゆるところに起こるので、症状も多種多様です。そのなかでもよく起こる症状は、視力の低下、手足の筋力低下、感覚鈍ま、小脳性運動失調、尿便の障害、ろれつが回らないなどです。多発性硬化症の初発症状は視力低下や下肢の筋力低下、排尿障害などが多くありますが、自然に軽快します。ところが数カ月、あるいは数年を経てふたたび発症します。このように症状の再発、軽快をくり返しながら、しだいに悪化していくのが特徴です。
 検査すると、髄液に細胞数やたんぱくがすこしふえています。なかでもミエリン塩基性たんぱくやオリゴクローナルバンドといった髄鞘の崩壊に伴う異常なたんぱくがみられます。MRI(磁気共鳴画像法)では大脳の側脳室周囲、脳幹、脊髄に病巣が多数みとめられます。異常を見つけやすい検査は、患者が点滅する市松模様を見てその反応を後頭部から調べる視覚性大脳誘発電位です。これは視力の低下と並行しています。
 治療は副腎皮質ステロイド薬を用います。急性期にはパルス療法といって、大量に点滴し、症状がおちついてきたら内服に切り替えます。1日20mgを2年間服用すれば、まず再発は起こりませんが、長期治療についてのコンセンサスはいまだに得られていないのが実情です。副腎皮質ステロイド薬以外にはインターフェロンβ(ベータ)が効果をあげています。ただし、副作用としてうつ病、自殺が要注意です。その他の再発予防薬には、グラチラマー酢酸塩、フマル酸ジメチル、フィンゴリモド塩酸塩、ナタリズマブなどがあり、それぞれ効果をあげています。
 急性期には特にからだをあたためないことが大切です。からだをあたためると、一時的に症状が悪くなります。たとえば風呂に入ってあたたまっているうちに脱力感が強まり、風呂から出られなくなることもあります。こうしたことから、病室のベッドも直射日光があたらないところを選びます。
 回復期には、からだを動かしたり深呼吸をした拍子に手や足がギューッと強くこわばり、痛みやかゆみを伴う有痛性強直性けいれんがあります。胸やおなかがリング状に締めつけられる感じをもつこともありますが、いずれもカルバマゼピンという特効薬があるので心配はいりません。
 多発性硬化症は国が指定する難病医療費助成制度の対象疾病(指定難病)です。

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