運動 家庭の医学

 むかしから人間は獲物を追って野山をかけめぐり、あるいは農耕や漁業をするなどして、たえずからだを動かしていました。あるいは幼児の生活をみてもわかるように、幼児は1日中たえず動き回っています。すなわち、人間は生まれつき運動をするようにつくられた動物であり、動いているのが正常なのです。現代文明のなかで、あるいはクルマ社会のなかで、ぬくぬくと動かない都会生活をすること自体が異常なことなのです。 
 中年になり、階段をのぼったり急いで歩いたりしたときに動悸(どうき)や息切れを感じて、これを年のせいにすることがあります。しかし、これは実は年のせいではなく、ふだんの運動不足のためかもしれません。運動不足は生活習慣病の発生と密接に関連しています。運動としては、脂質や糖質をエネルギー源として使う「有酸素運動」が生活習慣病の改善、心肺機能の改善をうながす効果が期待でき、ウオーキング、体操、エアロビクス、水泳、サイクリングなどが含まれます。ここでは病気の予防の観点から運動の効果についてみてみましょう。

(執筆・監修:自治医科大学附属さいたま医療センター 総合医学第1講座 主任教授/循環器内科 教授 藤田 英雄)